2022 Fiscal Year Research-status Report
Targeting liver fibrosis with CAR-T cells
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22K15982
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
付 慶傑 北海道大学, 医学研究院, 助教 (20905509)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CAR T療法 / 膵臓星細胞 / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CAR-T細胞の特異的な除去によって活性化した肝星細胞が除去された後、肝線維症が改善されるかどうかを検討することを目的としている。 固定されたマウスの肝星細胞および人間のLX2細胞株において、免疫蛍光染色によりFAPの発現が観察されたが、しかし、活細胞染色では細胞表面で明確なFAPの発現は観察されず、また、マウス肝星細胞に対するWestern BlotでもFAPの発現は極めて少ないことが示された。さらに、マウスNASHモデルまたはCCl4誘発の肝線維症モデルのいずれにおいても、肝線維化領域でのFAPの高発現は病理検査により検出されていない。したがって、人間の肝線維症において活性化された肝星細胞がFAPを過剰発現することが広く報告されているにもかかわらず、マウスの肝線維症モデルではFAP CAR T療法の実験に適していない事が明らかになった。 肝星細胞の他に、膵臓にも星状細胞の一群が存在し、膵癌発症時にはがん関連線維芽細胞(CAF)として活性化する。膵臓星細胞も活性化後にFAPを発現すると報告されており、我々も膵臓星細胞表面で特異的に高発現するFAPを検出した。このため、膵臓星細胞の発現するFAPを標的としたCAR-T細胞療法の膵癌治療における潜在的な可能性について検討した。 まず、CAR T細胞がFAP過剰発現の陽性対照およびFAP非発現の陰性対照の線維芽細胞を攻撃することにより、CAR T細胞の攻撃効果と特異性を確認した。その後、FAP CAR-T細胞を活性化したマウス膵臓星細胞に対して攻撃性を評価し、星細胞がCAR T細胞によって効果的に攻撃されることを確認した。最後に、星細胞と腫瘍細胞の共培養が腫瘍細胞の増殖を促進することが確認された上で、共培養システムにCAR T細胞を加え、CAR T細胞が星細胞を殺傷することで腫瘍細胞の増殖を有意に抑制することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝星細胞や肝線維症に対するCAR T療法は、目標タンパク質FAPの発現量の問題から継続できなかったが、膵臓星細胞および膵癌に対するCAR T療法の実験は順調に進んでいる。初期のin vitro実験はほぼ完了し、CAR T細胞が活性化した膵臓星細胞を死滅することができ、これにより膵癌細胞の増殖を遅らせられることがわかった。これらの結果は、今後行われる動物実験に充分な理論的基礎を提供している。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの実験結果に基づき、今後は、CAR T療法の安全性と効果を評価するために動物実験を行う。具体的には、マウスの膵癌モデルを導入し、FAP CAR T細胞を注射し、腫瘍の進行を抑制若しくは緩和できるかどうかを評価し、FAP CAR T細胞が膵癌治療の可能性を持つかどうかを検討する。また、積極的な結果が得られた場合、人間由来細胞や関連疾患モデルに対するCAR T療法の応用可能性についても検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究費は、研究計画に基づき95%以上を使用した。ただ、物価調整や緊急の予備費としてのため、ある程度余剰があった。2023年度には動物実験を実施する予定であり、物価の上昇に伴い、必要な金額は当初予想よりも増加する見込みである。そのため、2022年度の余剰助成金は2023年度の助成金と共に動物実験に投入される。
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