2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K15995
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 穣 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (80939249)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 胃癌 / バイオマーカー / microRNA / ヘリコバクター・ピロリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多発胃癌の発生危険因子として背景胃粘膜のマイクロRNA発生異常に注目し、そのバイオマーカーとしての有用性と、多発胃癌の発症機序を明らかにし、胃癌に対する新規治療法の開発につなげることが目的である。そのため、関連病院との共同研究を行い、早期胃癌内視鏡治療後に異時性多発癌を複数回発症した胃粘膜からの生検と、初発後長期にわたって発癌を認めなかった胃粘膜からの生検とを行い、組織保存液を用いてRNA分解を抑制した状態で検体を収集した。両群間で有意な差を有するマイクロRNAは胃粘膜に発癌への不可逆的なスイッチが入った状態を表すバイオマーカーとなりうると考えている。胃発癌はヘリコバクター・ピロリ感染によって惹起される萎縮性胃炎の進展によって引き起こされるが、そこには発癌へのスイッチが入るタイミングである“point of no return”が存在することが想定される。ヘリコバクター・ピロリ除菌療法による胃発癌抑制がある集団においては有用だが、他集団においては有用ではないことが報告されていることからも、“point of no return”が存在すると考える。本研究ではこれらのマイクロRNAがその“point of no return”を表すバイオマーカーとなり得るかについて検討し、胃発癌機序においてそのマイクロRNAが関わる分子生物学的意義について明らかにする。現在、多発癌群とコントロール群の間で有意に発現に差があったマイクロRNAの中からmiR-223-3pとmiR-6799-5pという2種類のマイクロRNAに注目して検討を進めている。特にmiR-223-3pは、胃発癌において促進的に働くマイクロRNAであることが複数報告されている。また、発癌に寄与するヘリコバクター・ピロリ菌が産生する重要な因子であるCagAがmiR-223-3pの発現異常に関与することが報告されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロRNAを同定し、その発癌機序における意義を明らかにするための実験準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト胃癌細胞株やラット胃細胞株を用いて、miR-223-3pの発現制御機構を検討する。具体的には、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染やヘリコバクター・ピロリ菌CagAの強制発現によるmiR-233-3pの発現動態の変化を評価する。さらに、その標的遺伝子の発現評価を行う予定である。また、背景胃粘膜の萎縮性変化の度合いが胃発癌の危険因子となることがわかってきたため、miR-233-3pの発現状況との関係性を解析する。さらに、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法がmiR-233-3pの発現に与える影響について実験を進める。同時にmiR-6799-5pについても機能解析を進めていく。
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