2022 Fiscal Year Research-status Report
新規デバイスを用いた血液内cfDNA解析による食道癌化学放射線療法の効果予測
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22K16000
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山崎 明 熊本大学, 病院, 特任助教 (50870945)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Cell-free DNA / 食道扁平上皮癌 / 化学放射線療法 / 治療効果予測 / ナノ多孔質ガラスデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食道扁平上皮癌に対する化学療法、化学放射線療法(Chemoradiotherapy;CRT)における効果予測因子の同定と臨床応用を目的とする研究である。具体的には、CRT前とCRT開始後早期の血液検体/食道癌生検組織を用いて癌関連遺伝子の変異を包括的に探索し、奏功群、非奏功群に特有な遺伝子変異のパターンを同定する。引き続き、新規に開発したナノ多孔質ガラスデバイスを用いて、治療後の血漿中エクソソーム・Cell-free DNAの遺伝子変異パターンを検討し、リキッドバイオプシーを用いたCRT後の早期効果予測可能なバイオマーカーの同定を目指す。 2021年5月~2022年6月にかけて食道扁平上皮癌(cStageⅡ~Ⅳa)に対して術前化学療法および術前CRT・根治的CRTが行われた18症例を対象とし、治療開始前・化学療法1コース終了後・RT40Gy照射後・治療終了後・再発症例は再発時に血液検査を行い、検体の採取・保存を行った。患者血清から回収されたエクソソームに結合するcfDNAの断片化の状態を、高感度電気泳動システムを用い解析したところ、血清から回収したcfDNAでは、断片化のピークがいわゆる”Nucleosome-guided Fragmentation Pattern”に類似していたが、ナノ多孔質ガラスデバイスを用いて回収したcfDNAではそのピークが異なっており、癌特有の変異を反映したcfDNA断片化パターンを見ている可能性があった。このことは、ナノ多孔質ガラスデバイスにより回収したエクソソーム結合cfDNAが血清中のcfDNAのうち、癌細胞由来のものを多く含んでいる可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年5月~2022年6月にかけて食道扁平上皮癌(cStageⅡ~Ⅳa)に対して術前化学療法および術前CRT・根治的CRTが行われた18症例を対象とし、治療開始前・化学療法1コース終了後・RT40Gy照射後・治療終了後・再発症例は再発時に血液検査を行い、検体の採取・保存を行った。現在、ナノ多孔質ガラスデバイスを用いて、患者血清から回収されたエクソソームに結合するcfDNAの定量化を試みている段階であるが、当初の想定よりも定量化できるcfDNAの量が少なく、研究の進捗が遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、①癌関連遺伝子変異の検索を行った後、得られたDNAに対し、癌に関連する409遺伝子の全エクソンをカバーするキャンサーパネルを用いたターゲットシークエンスを低コスト高深度に行い癌組織の体細胞遺伝子変異を抽出する。具体的にはイルミナ社 Comprehensive Cancer Panelを用いてライブラリー調整を行い、当大学医学部総合研究施設の次世代シークエンサーMiSeqを用いて、ターゲットとなる変異を検索する。さらに、②食道扁平上皮癌公開データベースおよび癌関連遺伝子変異統合データを活用し、上記で得られた結果と統合し、CRTの治療効果判定に有用な遺伝子変異候補を絞り込む予定である。その後、CRTの効果と関連する変異遺伝子候補の抽出を行う。具体的には、臨床経過から奏功群および非奏功群に分類し、各群における特異的な遺伝子変異パターンを探索する。①、②の結果から選ばれた変異を来す遺伝子のうち、奏功群、非奏功群と関連のあるものを多変量解析結果に基づき絞り込み、候補遺伝子を抽出する。 ナノ多孔質ガラスデバイスを用いたエクソソーム結合cfDNAの回収に関しては、現在Wash Bufferなどの調整・最適化が進んでおり、回収量の増加が見込まれている。
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Causes of Carryover |
2023年度は、生検標本から抽出したDNAを使用した化合物ライブラリーの網羅的な実験の予定が当初の想定より増えたため、その分の遂行のため、ライブラリー合成キット、次世代シークエンサー解析試薬などの消耗品の購入が必要です。また、ナノ多孔質ガラスデバイスを用いた血液検体の解析を行うために、DNA分離デバイスとDNA抽出用関連試薬が必要です。 初年度は成果の公表に至らない可能性がありますが、最新の情報収集は必要であり、学会参加費用を計上しています。2023年度には国内の学会に出席し、途中経過の発表を予定しています。以上の使用計画により、次年度使用が生じました。
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