2023 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患における生物学的製剤の腸管組織中濃度の測定法開発
Project/Area Number |
22K16007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井原 聡三郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60770039)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患(IBD)の治療薬として生物学的製剤が多数承認されている。各製剤を適正に使用する上で、血中濃度モニタリングのみならず腸管や糞便などIBDの炎症と深く関係する部位の薬物動態の把握が重要となる。しかし、従来のELISA法では腸や糞便中の微量な生物学的製剤の検出がしばしば困難となる。そこで本研究は、LC-MS/MSによる質量分析法を基に感度や精度を上げる技術的工夫を加え、組織中の生物学的製剤の濃度測定法を確立する。さらに、実際に本測定法を用いて、製剤治療中IBD患者の大腸組織中の製剤濃度とIBD治療効果との関連を評価する。本年度は、LC-MS/MSによる質量分析法を用いた腸管組織や糞便中の生物学的製剤の濃度測定を確立するための検証実験を行った。製剤濃度の標準曲線を作成するため、未治療マウスの腸管組織および糞便から蛋白を抽出し、その蛋白抽出液に濃度既知の生物学的製剤(IFX、VDZ、UST)を添加した。さらにトリプシンによる蛋白分解を経てLC-MS/MSにてペプチド分析を行い、各製剤の特異的ペプチドを同定し定量した。特に、腸管組織および糞便中からの蛋白抽出法の検討を行った。ホモジナイザー(Mini-beadbeater-96, BioSpec)と界面活性剤を用いた物理的破砕/溶解による蛋白抽出を検討した。4種類の界面活性剤(Guanidine hydrochloride; GuHCl,triton X-100, Sodium dodecyl sulfate,Deoxycholate)各々について蛋白抽出効率を検討した。現時点の検討では6M GuHClと1% triton X-100の効率が良いことが再現性を持って確認された。本研究の課題である免疫沈降法の併用において、界面活性剤による蛋白質変性が免疫沈降法の回収効率を下げる可能性がある。変性作用の強いGuHClを用いた後に透析法で変性解除するか、非変性のtriton X-100を用いるかなどを本研究で検討し、最適な蛋白抽出法を現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続いて本年度はLC-MS/MSによる質量分析法を用いた腸管組織や糞便中の生物学的製剤の濃度測定を確立するための検証実験を行った。製剤濃度の標準曲線を作成するため、未治療マウスの腸管組織および糞便から蛋白を抽出し、その蛋白抽出液に濃度既知の生物学的製剤(IFX、VDZ、UST)を添加した。さらにトリプシンによる蛋白分解を経てLC-MS/MSにてペプチド分析を行い、各製剤の特異的ペプチドを同定し定量した。特に、腸管組織および糞便中からの蛋白抽出法の検討を行った。ホモジナイザー(Mini-beadbeater-96, BioSpec)と界面活性剤を用いた物理的破砕/溶解による蛋白抽出を検討した。4種類の界面活性剤(Guanidine hydrochloride; GuHCl,triton X-100, Sodium dodecyl sulfate, Deoxycholate)各々について蛋白抽出効率を検討した。現時点の検討では6M GuHClと1%triton X-100の効率が良いことが再現性を持って確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題である免疫沈降法の併用において、界面活性剤による蛋白質変性が免疫沈降法の回収効率を下げる可能性がある。変性作用の強いGuHClを用いた後に透析法で変性解除するか、非変性のtriton X-100を用いるかなどを本研究で検討し、最適な蛋白抽出法を現在検討中である。また、腸管組織および糞便中の生物学的製剤(IFX, VDZ, UST)の薬物濃度をLC-MS/MSによる質量分析法を用いて測定するにあたり、今後は以下の課題を検討予定であり、準備を進めている。 1. 内部標準の工夫(特異的ペプチドを免疫グロブリンに付加する方法) 2. 検出感度を向上させる工夫(免疫沈降法による生物学的製剤の濃縮など) 3. 各生物学的製剤に特異的なペプチドの同定 4. 本測定法を用いた生物学的製剤の組織中濃度とIBD治療効果との関連の解析
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