2023 Fiscal Year Annual Research Report
シングルセルマルチオミックス解析による肝がん微小環境の解明
Project/Area Number |
22K16037
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
村居 和寿 金沢大学, 保健学系, 助教 (10828099)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肝がん / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫抑制分子PD-1/PD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は多種の固形がんに対し有効性を示す。しかしながら、最近進行肝臓がんの一次治療として認可された「アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法」において、その奏効率は27%に留まっている。また近年、生活習慣病の増加と共にメタボリックシンドロームを背景とした非ウイルス性肝がんが増加している。なかでも非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に由来する肝がんはICI治療成績が悪く、予後不良であることが報告されている。 ICI治療効果を規定するがん組織型として、腫瘍浸潤リンパ球が多い炎症性の“Hot”な腫瘍では治療効果が高く、非炎症性の“Cold”な腫瘍では治療効果が不良であることが報告されている。私たちは、150症例の肝がん組織を対象としたDNA chip解析から、T細胞マーカーであるCD3発現と逆相関する遺伝子としてGeneXを同定した。 興味深いことに、マウス肝がん移植実験において、野生型腫瘍と比較しGeneX KO腫瘍ではCD4・CD8 T細胞、B細胞、樹状細胞の有意な浸潤増加が認められ、抗PD-1抗体によるICI治療効果が著しく改善された。腫瘍組織のメタボローム解析をおこなったところ、GeneX KOの腫瘍微小環境中では、グルタミンをはじめとするアミノ酸濃度が有意に上昇していることが明らかになった。そこで、グルタミントランスポーター(ASCT2)およびその制御因子(ATF4, c-Myc, HIF-1α)の発現を確認したところ、野生型と比較してGeneX KO腫瘍において顕著な発現低下が認められた。 本研究から、GeneXは肝がんの新規免疫治療標的となる可能性が示唆された。
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