2023 Fiscal Year Research-status Report
浸透圧応答遺伝子が潰瘍性大腸炎の腸管免疫に与える影響
Project/Area Number |
22K16054
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清島 亮 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10573412)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 浸透圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは粘膜微小環境の浸透圧変化によりtonicity-responsive enhancer-binding protein (tonEBP)をはじめとした浸透圧応答タンパクが上皮細胞ならびに間質に存在するマクロファージにおいて活性化することを見出し、かつその活性化が粘膜治癒過程と相関することを明らかにしてきた。本研究ではそれらの知見をさらに発展させ、潰瘍性大腸炎(ulceritive colitis, UC)腸管の粘膜治癒過程における浸透圧応答タンパクが腸管免疫および上皮再生に与える具体的な影響を明らかにすることが目的である。 UCマウスモデルであるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルを用いて実験を進めた。その結果、腸管浸透圧上昇によりtonEBPが発現上昇、活性化するという現象を捉えることができた。詳細に検討を進めた結果、浸透圧上昇の程度により上皮細胞と炎症性マクロファージとが異なるタイミングでtonEBP活性化を起こすことが分かった。 そこで、両細胞における浸透圧応答タンパクの活性化が粘膜治癒にどう影響を与えるか、明らかにしたいと考えた。まず正常腸管オルガノイドを用いた実験で上皮細胞におけるtonEBP活性化の意義を検討した。培養液浸透圧を上げることで上皮細胞内tonEBPはたしかに活性化し、オルガノイドの増殖能が極端に落ちることも確認された。浸透圧上昇初期における上皮内の変化は上皮脱落に向かうマウスでの減少と矛盾しない結果であった。次にマクロファージにおけるtonEBP活性化の意義を検討するため、Lys-M Cre; nfat5 flox/floxマウスを作成した。このマウスに対して同様にDSS投与を行ったところ、腸管における炎症は抑制される傾向にあることがわかった。 以上の結果から、浸透圧上昇により促進されるtonEBPは上皮細胞、マクロファージ双方において、粘膜治癒を阻害する役割があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの使用が年度後半になってからとなったが、予定していた実験は概ね行うことができた。今後十分な再現性を確認する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
腸管内浸透圧をさらに高めるために高塩分食を用いた実験を予定している。また、本研究により明らかとなった知見が治療標的となり得るかの検討のため、NFAT5阻害剤を用いた実験も予定している。
|
Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの使用が年度後半になってからとなったため。今後計画している実験に用いる、マウスの特殊食餌や阻害剤等に用いる予定である。
|