2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of predictive biomarkers for pancreatic cancer in IPMN using blood metabolome analysis
Project/Area Number |
22K16058
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
中野 遼太 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (40909975)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メタボロミクス / IPMN / 膵癌 / バイオマーカー / 質量分析 / 血液 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌の早期診断のために、膵癌発症高リスク状態を検出するバイオマーカーを構築することが求められている。これまでに研究代表者は、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)を用いた血液メタボロミクスにより、膵癌と膵管内粘液性腫瘍(IPMN)の間の血中代謝物には強い相関があることを明らかにしてきた。IPMNは膵臓癌の明確なリスクファクターであるが、IPMNの膵癌発症機序は不明かつ多彩であるため、発症予測が非常に難しく、IPMNの長期サーベイランスには定まった見解がないという課題がある。本研究課題では、血液メタボローム解析を用いて、膵癌発症へと進行する高リスクのIPMNを検出する、膵癌予測バイオマーカーを確立する計画であり、令和4年度においては、主に解析対象の血液検体及び患者背景情報の収集及び、検体の操作手順を確立し、GC/MSの網羅的解析系を構築することを目標とした。まずは分析対象とする代謝物ライブラリを整備し、これらの分析条件を最適化した。その結果、約320化合物を対象に分析することを実現した。分析の信頼性を担保するためのクオリティコントロール法を導入し、内部標準物質を用いた内部標準法にてより確実な分析法を確立した。検体の採取方法については、採取時間や保管温度などの代謝物に影響を及ぼす要因を最適化し全例に標準手順化することで、採取条件による影響を最小限とすることができた。現在分析対象である、IPMN約100検体、IPMN由来浸潤癌及びIPMN併存膵癌約25検体、健常者約30検体の検体を採取し、患者情報からIPMNの悪性リスクを層別化を行った。順調に検体収集は進んでおり、現在training setを作成して、解析方法に関して検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に目標としていた、血液検体の操作手順の確立し、GC/MSの網羅的解析系を構築することに関しては既に確立し達成しており、順調と言える。また、血液検体収集についても当初の目標よりも進捗状況は良く、最終年度に予定しているtraining set及びvalidation setの解析実験のための準備を順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、更なる血液検体の収集と、IPMN/IPMN由来浸潤癌/IPMN併存膵癌の患者検体を用いた血漿メタボロミクスによる包括的代謝プロファイリングを行い、膵癌発症高リスクのIPMNを検出するバイオマーカーの作成、を到達目標とする。収集した血液検体からtraining setを作成し、構築したGC/MSの網羅的解析系の約320化合物に対してメタボローム分析を行う。training setは、IPMNは画像所見や血液検査データ、病状経過から、膵癌発症low riskとhigh riskに層別化して比較検討を行う。320化合物のうち、内部標準法として解析できる153化合物に関しても単変量解析により、代謝物の差異を解析し、膵癌発症高リスクとなるIPMNを検出するバイオマーカーを構築する。単一の代謝物での差異による構築が難しければ、多変量解析により複数の代謝物によるバイオマーカーを構築する。さらにvalidation setを作成して構築したバイオマーカーの検証実験を行うことにより、バイオマーカーの堅牢性を高めることができる。また、メタボローム解析で得られた結果を代謝経路上にマッピングすることで、IPMNの悪性化に関与する代謝環境、代謝経路を抽出し、IPMNの悪性化を検出するバイオマーカーがもつ代謝物の生理学的意義について考察し、メカニズムを検証するための動物実験などについても検討する。
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Causes of Carryover |
分析に用いる消耗品に関しては既に所有していた分があり、物品費は予定よりも少額になった。研究課題に関する学会出席は行ったが、研究費を使用しなかった。令和5年度ではよりサンプルサイズを拡大して解析を行うため、物品費として次年度へ繰り越し、さらに、得られた研究結果に関して国際学会での発表や論文作成を行い、計画通り研究を遂行する。
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