2022 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来心臓オルガノイドを用いた拡張型心筋症の新規治療ターゲット探索
Project/Area Number |
22K16072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟越 俊介 京都大学, iPS細胞研究所, 特定助教 (70941772)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心臓オルガノイド / 拡張型心筋症 / 心臓トロポニンT変異 / ドキソルビシン心筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
TNNT2ホモ、ヘテロ変異iPS細胞を樹立し、心筋細胞への分化誘導法を確立した。その後、iPS細胞由来心外膜細胞と混ぜ合わせることにより心臓オルガノイドを作製した。また、収縮拡張機能評価のため、engineered heart tissue(EHT)も同様の細胞を用いて作製した。 ホモ変異株ではサルコメア不整などの表現系が認められたが、ヘテロ変異株では未成熟、成熟状態でも明らかな疾患表現系は見られず、更なる刺激が必要と考えられ、現在心不全刺激などの様々な外的刺激を加えた際のサルコメア異常や、収縮拡張障害の有無を観察中である。 サルコメア変異に伴う心筋症の比較対象として、抗がん剤であるドキソルビシン投与に伴う心筋症モデルを確立した。濃度依存的にサルコメア障害、収縮障害を認め、心臓オルガノイドを用いて、心筋細胞、心臓線維芽細胞におけるドキソルビシンの影響をRNAシークエンスにて観察した。 また、サルコメア障害を機械学習にて判定する実験系を確立した。まずはサルコメア障害が明らかに認められるドキソルビシン心筋障害モデルを用いて条件検討を行った。心筋細胞をフローサイトメーターを用いてsorting後、384wellプレートに播種し、成熟化を促した後にドキソルビシンを添加した。添加群をコントロール群を教師データとして機械学習にかけ、サルコメア構造をスコア化した。学習後に、様々な濃度でのサルコメア構造を機械に判定させたところ、濃度依存的にサルコメアスコアを算出することが確認できた。このように、機械学習を用いたhigh throughput screening(HTS)系を構築し、現在化合物ライブラリーを用いたHTSを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、TNNT2変異iPS細胞を用いた心臓オルガノイドの作製に成功した。また、オルガノイドに加え、同様に心外膜細胞を用いたengineered heart tissueの作製にも成功した。それらを用いて現在、TNNT2変異に伴う拡張型心筋症の表現系の探索を行っている。また、その他の心筋症として薬剤性心筋症であるドキソルビシン心筋症モデルを確立した。それらの心筋症の新たな治療薬探索の実験系として、機械学習を用いたサルコメア構造評価系を確立し、治療候補化合物探索のためのHTS系を確立した。この実験系は細胞構造に変化の起こるあらゆる疾患において有用な方法であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、サルコメア変異に伴う拡張型心筋症、薬剤性拡張型心筋症モデルを心臓オルガノイド、EHTを用いて観察し、それぞれの疾患特異的、また共通する疾患メカニズムの解明を目指す。画像、機械学習を用いたHTS系による新規治療候補化合物探索に加え、RNAシークエンスによる遺伝子発現解析を行い、疾患進展に関わるregulator geneの同定を試みる。 TNNT2ヘテロ変異に伴う拡張型心筋症モデル構築に関して、未熟状態、成熟化後においても明らかな疾患表現系が認められない点に関しては、現在、心不全負荷、薬剤付加、などによる更なる疾患関連負荷を試しており、疾患表現系を明らかにする負荷法の確立に努める。
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Causes of Carryover |
現在、サルコメア変異に伴う拡張型心筋症モデルに関しては、疾患表現系の探索中であり、RNAシークエンスに使用する予定分の助成金を次年度に繰り越した。疾患関連負荷の同定のための実験を施行中であり、疾患表現系が確認出来次第、RNAシークエンスによる疾患メカニズム解析を進める予定である。
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