2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化を基盤としたマクロファージ-心筋細胞連関に着目したHFpEFの病態解明
Project/Area Number |
22K16076
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂井 千恵美 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90827982)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心不全 / 炎症 / DNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)の病態において細胞老化、特にマクロファージの老化が心臓構成細胞に細胞肥大、繊維化、炎症を惹起するかを探索することを目的としている。 HFpEFマウスモデルの作成に難渋したため、マウスの左冠状動脈前下行枝を永久結紮し心筋梗塞モデルを作成し心筋梗塞後の心筋リモデリングにおける細胞老化の影響を検討した。マウスは野生型とDNA二本鎖切断の修復に関与するタンパクKu80をノックアウトしたKu80+/-を用いた。Ku80欠損マウスではDNA損傷修復の不全により細胞老化が加速している。 Ku80+/-マウスは野生型に比べ心筋梗塞後の予後が悪く、心機能低下を認めた。心筋梗塞後24時間ではKu80+/-マウスは野生型と比較して梗塞面積の有意差を認めなかったが、1ヶ月後では梗塞面積が有意に増加した。各種炎症性サイトカインの発現を時系列(心筋梗塞後6,24,48,72時間)で解析すると、Ku80+/-マウスではIL-10の発現増加の遅延を認めた。IL-10は抗炎症あるいは炎症収束に関与していることから、Ku80+/-マウスではIL-10の発現遅延により、心筋梗塞後の炎症応答に不全をきたしている可能性が示唆された。このマウスの骨髄由来単球をマクロファージに分化させ炎症性(M1)あるいは抗炎症性(M2)マクロファージへの極性化をサイトカインの発現解析により解析したが、Ku80欠損細胞でM1あるいはM2マクロファージの極性化の調節不全は認められなかった。これらの結果からDNA損傷蓄積に誘導される細胞老化は心筋においてIL-10の発現遅延により心筋梗塞後の炎症応答の調節に異常をきたす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HFpEFマウスモデルの作成に難渋したため、心筋梗塞モデルを作成し解析することとした。心筋梗塞は心不全の主原因である。Ku80ノックアウトマウスを用いた心筋梗塞モデルの解析から、DNA損傷修復不全は心筋梗塞後の予後を悪化させ、心機能低下を増悪させることが示された。心筋梗塞後早期(24時間)では野生型と比較して梗塞巣のサイズに有意差は認められなかったが、1ヶ月後ではKu80欠損マウスで梗塞巣サイズが有意に増加した。さらにKu80欠損心筋組織では心筋梗塞後のIL-10の発現増加が野生型に比べ遅延ししていた。これらのことから、DNA損傷修復不全はIL-10の発現遅延により心筋梗塞後の炎症応答の収束に異常をきたし心機能低下や心筋梗塞後の予後を悪化させる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずIL-10の発現遅延がどの細胞で起きているのかをマウス心筋組織の免疫染色により特定する。マクロファージではアポトーシスを誘導するとL-10の発現が増加することが報告されているが、心筋細胞でも同様のことが起こるかをヒト心筋初代培養細胞を用いて検討する。これまでの検討からIL-10の発現に寄与する細胞として浸潤性のマクロファージではない可能性が示唆されたが、心筋組織常在のマクロファージがIL-10の発現に寄与するかを検討する。さらに心筋梗塞後のリモデリングにおけるIL-10の機能について解析を行い、心筋梗塞後のIL-10の補填によってKu80欠損マウスで予後が改善するかを検討する。DNA損傷応答とIL-10シグナルの連関についても探索していく。
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[Journal Article] A possible role for proinflammatory activation via cGAS-STING pathway in atherosclerosis induced by accumulation of DNA double-strand breaks2023
Author(s)
Chiemi Sakai, Keitaro Ueda, Kohei Goda, Rikuto Fujita, Junji Maeda, Shinya Nakayama, Yusuke Sotomaru, Satoshi Tashiro, Masao Yoshizumi, Takafumi Ishida, Mari Ishida
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 13
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Cigarette smoke induces mitochondrial DNA damage and activates cGAS-STING pathway: application to a biomarker for atherosclerosis2023
Author(s)
Ueda, Keitaro Sakai, Chiemi Ishida, Takafumi Morita, Kosuke Kobayashi, Yusuke Horikoshi, Yasunori Baba, Akiko Okazaki, Yuma Yoshizumi, Masao Tashiro, Satoshi Ishida, Mari
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Journal Title
Clinical Sciene
Volume: 137
Pages: 163-180
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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