2022 Fiscal Year Research-status Report
冠動脈疾患におけるHDL-miRNAの不安定プラーク進展および予後へ与える影響
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22K16084
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
近田 雄一 順天堂大学, 医学部, 助教 (60910734)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | microRNA / HDL-C / 不安定プラーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、動脈硬化残余リスクのうち、high density lipoprotein (HDL)の機能(動脈硬化組織でマクロファージが貪食したコレステロールを引き抜く能力)に注目する。microRNA (miRNA)は21-25塩基長の1本鎖RNA分子であり、遺伝子の転写後発現調節に関わり、動脈硬化を含む広範な生物学的プロセスを担っている。さらに、HDLの上にもmiR-126, -223, -92などのmiRNA (HDL-miRNA)が存在し、HDL-Cと血管内皮細胞とのやり取りの中で、抗動脈硬化作用や抗炎症作用を発現していること示唆されている。HDL-miRNAのHDL機能への関与については不明な点も多いが、研究代表者はこれまでに、miR-1914-3pが、心血管死亡リスク上昇に影響を与えている可能性を示している。そこで本研究計画では先行研究をさらに発展させ、冠動脈疾患症例において、HDL-miRNAによって引き起こされるHDLの機能低下が、冠動脈プラークの不安定化を招き、予後の悪化につながるという仮説を検討している。2022年度は、PCIレジストリから、NIRS-IVUSを用いた症例で、責任病変に不安定プラークを認めた症例を無作為に抽出(n=10)、それに年齢・性別・LDL-C値を一致させた、不安定プラークを認めなかった症例を1:1で無作為に抽出した(n=10)。さらに、上記で抽出された症例の凍結保存血漿からApoA1レジンカラム(Academy Biomedical 社、Goat Anti-Human Apolipoprotein AI Sepharose 4B Gel )を用いてHDLを単離した。そしてHDL上のmiRNAを、 mirVana PARIS Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて単離し、その発現量の定量化を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では1) HDL機能を制御するHDL-miRNAの同定、2) HDL-miRNAおよびHDL機能と冠動脈不安定プラークの関係、3) HDL-miRNAおよびHDL機能の予後への影響 の3点を明らかにする。 2022年度は、PCIレジストリから、NIRS-IVUSを用いた症例で、責任病変に不安定プラークを認めた症例(maxLCBI4mm>400)を無作為に抽出(n=10)、それに年齢・性別・LDL-C値を一致させた、不安定プラークを認めなかった症例(maxLCBI4mm<400)を1:1で無作為に抽出した(n=10)。さらに、上記で抽出された症例の凍結保存血漿からApoA1レジンカラム(Academy Biomedical 社、Goat Anti-Human Apolipoprotein AI Sepharose 4B Gel )を用いてHDLを単離する。予備検討にてすでにHDLの単離方法は検証済みで、超遠心・液体クロマトグラフィー・ポリエチレングリコールを用いた沈殿法に比して、この方法では、miRNAを含有するexosomeや他のリポタンパク粒子の混入が極めて少ないことがわかっている。HDL上のmiRNAを、 mirVana PARIS Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて単離、その発現量をTaqMan MicroRNA Assays (Thermo Fischer Scientific)を用いて定量化する。まずパイロット研究で冠動脈疾患症例において予後への関与が示唆された-1914-3pを中心として発現量を定量している。研究計画に照らして、データベースからの症例抽出、HDL単離方法の確立、さらにはHDL-miRNAの単離方法が確立しつつあり、比較的順調に推移していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マクロファージ様細胞(THP-1またはJ774細胞)を放射性同位体標識したコレステロールを含む培養液で培養し上記で単離したHDLを加え、さらに培養した後、培養上清中および細胞中の放射活性を測定し、総放射活性に対する培養上清中の放射活性の割合 (%) をHDLのコレステロール引き抜き能(CEC)として求める。また、HDL-miRNA (miR-126, -223, -92a, -92b, -1914-3pなど) をトランスフェクトしたTHP-1またはJ774細胞を用い、CECを測定しHDL-miRNAとHDL機能の関係を検証する。これらの研究で得られた結果をmaxLCBI4mm高値群・低値群、心血管イベントあり群・なし群、で比較し、臨床的な病勢・予後を反映するバイオマーカーとなりうるHDL-miRNAを同定する。HDL-miRNAのHDL機能への関与およびバイオマーカーとしての有用性については十分に検討されていない。そのため、本研究計画で得られる成果は全く新しい知見であり、臨床的意義は大きいと考えられる。
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Causes of Carryover |
2022年度に関しては、研究計画初年度であり1件の国内学会にて発信を行った。次年度以降に、国際・国内学会含め、積極的に学会発表を行って成果を発信する予定としているため、2023年度以降にそのためのリソースが必要であると想定している。また、HDL単離のためのカラム、miRNA単離のためのmirVana PARIS Kitおよび定量化のためのTaqMan MicroRNA Assaysを購入したが、2023年度以降症例数を増やしてより多くの検体を測定できるようにする予定であり、そのための購入コストも想定している。さらにCECを検討するためにマクロファージ様細胞を培養する必要があり、そのための購入コストも想定している。
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[Presentation] The prognostic implication of psoas muscle mass in patients with lower extremity arterial disease2023
Author(s)
Yuichi Chikata, Hiroshi Iwata, Tatsuya Fukase, Takehiro Funamizu, Shinichiro Doi, Hirohisa Endo, Hiroki Nishiyama, Iwao Okai, Tomotaka Dohi, Kikuo Isoda, Shinya Okazaki, Katsumi Miyauchi, Tohru Minamino
Organizer
第87回日本循環器学会学術集会