2022 Fiscal Year Research-status Report
心臓におけるミトコンドリア分解制御機構の解明と心不全治療薬創薬に向けた基礎的検討
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22K16102
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村川 智一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50902194)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心不全 / オートファジー / マイトファジー / ミトコンドリアダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
in vivo実験として、Bcl2-L-13 S272Aノックインマウスを用いて横行大動脈縮窄術(TAC)による圧負荷誘導性心不全モデルを作製した。手術後1週、2週、4週で心エコーを行い、4週目で臓器重量のデータを計測するとともに、タンパク質・RNA・組織評価のためのサンプルを採取した。ノックインマウスでは、野生型マウスに比してTACにより左室短縮率の低下及び心重量の増加傾向を認めた。 in vitro実験については、Bcl2-L-13 Ser272の責任kinaseを探索するため、siRNAライブラリのスクリーニングを進めている。あらかじめ96 well plateにsiRNA及びtranfection試薬を分注しておき、HA-Bcl2-L-13恒常発現HEK293A細胞を播種することでリバーストランスフェクションを行った。72時間後にCCCPを投与した後、抗p-Bcl2-L-13(Ser272)抗体による蛍光免疫染色を行った。Keyence BZ-X700のウェルスキャン機能を用いて自動撮影を行い、p-Bcl2-L-13(Ser272)陽性シグナルをカウントした。Image Jにより陽性シグナル数を計測し、シグナル数の減少が見られるものを候補として残すこととした。DMSO投与群に対してCCCP投与群で確実にシグナル数の増加が見られたことから、スクリーニングシステムが確立できたと考え、ライブラリスクリーニングを開始している。このライブラリは、708の遺伝子を含んでおり、全解析に39枚の96wellプレートの評価が必要である。現在約半数を超えるプレートにつき撮影を終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vivoの実験においては、ノックインマウスの産生数が十分でなく、サンプル取得にやや遅れが生じている。また、in vitroでのkinase screeningにおいては、BZ-X700による画像取得の際に焦点がずれてしまう問題があり、画像取得開始前に複数のウェルの焦点設定を要することや、画像の撮り直しが必要な場合があり、1つの96ウェルプレートを処理するのに想定よりも時間がかかっていることが、遅れの原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoの実験においては、各群の個体数を約10匹になるまでデータを蓄積し、表現型の確定を行う。その後、採取したサンプルを用いて、Nppa, NppbなどのmRNAレベルやミトコンドリア関連たんぱく質についてのWestern blotting、組織学的評価及び電子顕微鏡によりミトコンドリア形態の評価を行っていく。また、in vivoにおけるマイトファジーについては、マイトファジーレポーターマウスである、mito-QC TGマウスとの交配を念頭において進める。また、電顕でもミトコンドリアがオートファゴソームに取り囲まれるマイトファジー像をカウントする。 siRNAライブラリスクリーニングに関しては、p-Bcl2-L-13(Ser272)陽性シグナルを減少させていると思われる候補がすでに多数存在する。よって、候補を絞り込むために2次スクリーニングを準備する必要があると考えられる。我々は、目的のkinaseによりBcl2-L-13がリン酸化されることで、マイトファジー活性が上昇すると考えていることから、2次スクリーニングでは、siRNAによりCCCPにより誘導されるマイトファジーが減少するものを候補とする。マイトファジーはオートファゴソームマーカーであるLC3BとミトコンドリアマーカーであるATP synthaseを蛍光染色し、共局在を検出することで評価する。また、標的がセリン残基であることから、セリン/スレオニンキナーゼ活性が報告されているものを文献検索し、候補とする。最終的には、大腸菌によるタンパク質合成システムを用いてBcl2-L-13を合成し、購入したpurified kinaseとATPを混合することでkinase assayを行い、Western blottingによりp-Bcl2-L-13を検出し、実際にBcl2-L-13をリン酸化可能なものを最終候補とする。
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Causes of Carryover |
前述のように、in vivoでのサンプル取得及びkinase screeningで遅れが生じているために、in vivoサンプルの評価用にもしくは、kinase screeningに必要な抗体を始めとする試薬の使用料が減少し、主に物品費が計上額よりも減少した。 いずれの実験においても、時間は予想以上に要しているものの、実験系自体には問題ないため、次年度にin vivoサンプルを用いた生化学的評価、組織学的評価及び、kinase screeningに必要な試薬類の購入費として使用する。
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