2022 Fiscal Year Research-status Report
膜トポロジー変化に着目した核膜病の分子機序解明と心臓・筋疾患の治療標的分子探索
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22K16103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
四宮 春輝 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10908213)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核膜病 / 不整脈原性心筋症 / 膜トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性心筋症患者と同一の遺伝子変化を導入した疾患モデル動物TMEM43-S358Lノックインラットを用いた生化学的解析によりこれまで明らかにしていたTMEM43変異蛋白の糖鎖修飾変化や小胞体から核膜への局在変化が、患者から樹立したヒトiPS心筋細胞においても同様に認められるかを検証した。通常状態では、健常者由来と患者由来のiPS心筋細胞で分子修飾や局在に明らかな変化は見られなかったが、細胞に小胞体ストレスをかけることで患者由来の細胞においてのみ、糖鎖修飾変化や小胞体から核膜への局在変化が見られることを明らかにした。 また、PAタグを付加したTMEM43の野生型と変異型のアデノウイルスベクターを新生児心筋細胞に発現させ、相互作用蛋白の同定を試みた。相互作用蛋白の結合の特異性を上げるために細胞内分画を行なった上で検証を行なったところ、野生型のTMEM43蛋白には結合するにも関わらず、変異型のTMEM43蛋白には結合しない小胞体膜蛋白を同定した。 さらに、核膜に蓄積した変異型TMEM43蛋白が核内の遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにするために、まだ明らかな心臓線維化の表現型が出ていない6ヶ月齢のラットを用いて、心臓の外層と内層からそれぞれ心筋組織を採取し解析を行なった。TMEM43-S358Lノックインラットの心筋では、野生型ラットと比較して心臓の内層外層間のイオンチャネルやトランスポーターに関連する遺伝子群の発現差が減少しており、これらの遺伝子発現差の減少がノックインラットの催不整脈性に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者2名から樹立したiPS心筋細胞を用いて解析を行い、2名において同様のTMEM43蛋白の糖鎖修飾と小胞体膜から核膜への局在変化が確認できた。 TMEM43変異蛋白における相互作用蛋白の同定においては、相互作用蛋白の結合の特異性を上げるために、細胞内分画による核膜分画の抽出、蛋白を可溶化する界面活性剤の種類、抗体反応時間、抗体反応後の目的蛋白の溶出時間等を検討することで、変異型TMEM43には結合せず、野生型TMEM43のみに結合する蛋白の同定に成功した。 KIラットを用いたトランスクリプトーム解析においては、心臓組織の外層と内層に切り分けて心筋を採取し解析を行うことで、心臓の部位別の遺伝子発現プロファイルを把握し、さらにそれらプロファイルにおける野生型とKIラット間の遺伝子発現変化の差異を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に則り、これまでに同定したTMEM43相互作用蛋白の機能に基づく細胞機能の評価アッセイ系を確立し、野生型と変異型TMEM43が発現する心筋細胞においてそれぞれ解析を行う。
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Causes of Carryover |
学会がウェブ開催となったため当初計上していた旅費が不要になったこと、当初予定していた遺伝子発現解析の一部が完了しなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。今後研究計画に沿って、物品費、旅費、その他費用としての使用を計画している。
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