2022 Fiscal Year Research-status Report
抗菌物質であるリゾチーム・キトサン糖複合体の慢性緑膿菌気道感染への効果の解明
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22K16167
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
島田 翔 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (10907827)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性感染マウスモデル / 抗菌物質 / 薬剤耐性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性緑膿菌感染モデルの確立および薬剤の投与スケジュールの条件検討について アガロースビーズを用いて緑膿菌を気道内に投与するモデルを検討していた。ビーズ作成時の条件検討を通じて、感染回復期でも緑膿菌が肺内で10の3乗から10の4乗検出されるマウスモデルが確立できた。複数回の実験を通して、同様の結果が得られており、薬剤投与試験を検証するためのモデルができたと考えている。 並行して、リゾチーム・キトサン複合体(LYZOX)の毒性試験も実施した。マウス内にマイクロ噴霧器を用いてLYZOXを隔日投与する実験を行い、体重推移や肺の病理標本を用いて、LYZOXの肺への毒性を評価した。LYZOX投与を1mg/dlの濃度で隔日3回投与しても体重増加はコントロール群(リン酸緩衝液投与群)と比較して有意な違いは認めず、肺の組織所見においても明らかな炎症細胞浸潤所見などの変化は認められなかった。 以上より緑膿菌感染モデルの確立および、LYZOX気管内投与による毒性評価、投与スケジュールの調整は概ね完了できており感染モデルへのLYZOX投与実験を開始している。 in vitroの検証では微量液体希釈法を用いた菌の発育抑制効果の検証を始めている。臨床検体から分離される薬剤耐性株はまだ集まっていないが、まずは標準株を用いて薬剤併用効果について検証していく予定である。現在までのところ、LYZOXのロットの変更に伴う最低発育阻止濃度の変化が確認されており、新しいLYZOXのロット単剤による抗菌効果の再評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスモデルの確立、LYZOXの毒性試験の評価が完了して投与スケジュールが定まり、今後検証を進めていける準備が整った。in vitroの実験についてはLYZOXのロット変更によって、抗菌効果の再評価を行う必要が出てきたが、現在検証を進めており、近いうちに併用効果の検証が進められる状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスから得られた肺の病理組織やRNA、蛋白解析およびフローサイトメ トリー解析を通じて、本モデルで認められる免疫応答を対照群とリゾチーム・キトサン複合 体投与群で比較解析する。病理組織やフローサイトメトリー解析を通して、気道に集族する 免疫細胞を明らかにする。本素材を構成す るリゾチームについては既報から、細菌の菌体を破壊することを通じてTLR2, TLR9経路を介 した、TNFαやIL6など炎症を促進するサイトカインを増加させる作用やインフラマソームの 活性化が明らかにされている。この研究でも、まずはそれらのシグナル伝達経路に着目し、 real time PCRを用いたRNA解析やELISAを用いた蛋白解析を行っていく。並行して、臨床検 体から分離された緑膿菌の薬剤耐性株を用いた慢性気道感染モデルも作成し、FIC indexの 結果から相乗効果を認めた組み合わせの生体内での効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
前年度のマウス実験が教室内の他経費で実施できたことと、菌株や蛋白解析、RNA解析などで使用する試薬などをまだ購入しておらず、本年度購入しようと考えている。
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