2022 Fiscal Year Research-status Report
シングルセルRNAシークエンスを用いた加熱式タバコの長期曝露による肺傷害の解析
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22K16178
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鈴木 洋平 順天堂大学, 医学部, 助教 (00926149)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 加熱式タバコ / 慢性閉塞性肺疾患 / 喫煙 / シングルセルRNA-seq / 肺気腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、慢性タバコ煙曝露に関する肺傷害の解析システムを加熱式タバコに応用し、加熱式タバコの長期曝露が生体に与える影響について研究を行ってきた。本邦で最多のシェアをもつIQOSを用いてマウスに6か月の長期曝露を行った結果、IQOSエアロゾルの長期曝露により、燃焼式タバコと同等の肺気腫を生じ、その機序としてアポトーシスが深く関与していることを見出した。そこで、IQOS曝露を行ったマウス肺組織に対してシングルセルRNA-seq解析を行うことで、肺気腫発症機序をより詳細に分析することを目論み、本研究を実施した。 6か月間の曝露実験を行った対照群、IQOS群、CS群から1匹ずつ、合計3検体のマウス右全肺をシングルセルRNAシークエンス解析に供した。3検体の合計、21717個の細胞に対して解析を行った結果、31種類のクラスタが同定された。クラスタリング結果から推定される各クラスタに対応する細胞種分布を解析した。さらに、対照群、IQOS群、CS群の各群でクラスタ毎の細胞比構成を解析した。その結果、IQOS 群では他の群と比較して、naive CD4 T 細胞, B 細胞, 間質マクロファージの一部の細胞数が増加しており、CS 群では他の群と比較して肺胞マクロファージ, 好中球の細胞数が増加しているという結果を得た。しかしながら、細胞腫分布を分析した結果、気道上皮細胞など肺組織の構成細胞の絶対数が既報と比較してかなり少ないことがわかり、肺組織の分散方法を見直す必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回、マウス肺組織を用いたシングルセルRNA-seqをはじめて試みたが、概要で述べた通り、解析の主要なターゲットと考えていた気道上皮細胞をはじめ、肺の構成細胞の分画が低いという結果であり、サンプル調整の際の細胞分散の方法を見直す必要があると考えられた。再度、シングルセルRNA-seq解析を行う必要がある点で、進捗区分としては上記のように考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス肺組織を用いたシングルセルRNA-seq解析の経験者との情報交換を行い、細胞分散の方法については修正すべき点を明らかにしており、現在、加熱式タバコエアロゾルおよびタバコ煙曝露実験を施行し、サンプルの準備を行っている。気道上皮細胞を用いた実験についても並行して行った結果、加熱式タバコエアロゾルに多く含まれる成分のうち、プロピレングリコールがとくに気道上皮細胞への毒性が強い可能性を見出しており、マウス実験を補完するデータの集積を引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、他の原資にて、実験消耗品の支出の大部分をまかなうことができたため、本研究費の使用は現時点では最小限に留まっている。 次年度においては、実験助手雇用のための人件費および実験消耗品費、さらに2023年4月に予定されている日本呼吸器学会学術講演会の参加費、英文校正など論文執筆に関わる費用等への使用を予定している。
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