2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K16211
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
若林 華恵 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90645623)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病(CKD) / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)の症例は,感染症や心血管合併症のリスクが健常よりも高く,生命予後に関連する.我々の研究の最終目標は,CKD症例の健康寿命の増進であり,腸内細菌のDysbiosisを進展させない食事療法や薬物療法の選択,個々の糞便プロファイルの結果を生かした保存療法の確立を目指している.本研究は,CKD症例に生じる腸内細菌の変化がCa,P代謝に影響するという仮説を立て検証した.本研究は,「慢性腎臓病患者における腸内細菌叢に関する研究」(千葉大学大学院医学研究院倫理審査承認【承認番号:3140(2018-2021),M10475(2022-2024)】)の一項目として計画し実施した.対象はCKD stage5Dから糞便と血液検体を採取した.(株)明治製菓乳酸菌研究所との共同研究により糞便のメタ16s解析を行った. β多様性の検討では、患者群と健常対照群は有意に腸内細菌叢の組成が異なり,α多様性の検討では、菌種数を表す2指標(Observed features, Chao1)のみで患者群は有意に高値を示し,占有率の少ない少数菌の菌種の増加が考えられた.さらに群間比較解析(LefSe)や予測ゲノム解析(PICRUST)を追加し患者群の特徴を明らかにした.本研究では,患者背景,血液検査データ(透析前),使用薬剤,透析条件といった臨床情報と腸内細菌との関連を検討したが,Ca,P代謝に関わる複数のパラメータにおいて有意な相関を示したものはなかった.この理由は,腸内環境の変化は単一因子でなく複合的な要因であるためと推測された.今後,少数菌の増加を防げる優勢菌の移植により腸内Dysbiosisの進展を防ぐことができる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展しており、得た研究結果については、2023年は日本腎臓学会、日本透析学会にて研究を報告した。2024年は日本透析学会での公募シンポジウムで公表を予定しており、また論文化にむけて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、血液透析を行う慢性腎臓病(CKD)ステージ5を研究対象者としているが、今回得られた結果をもとにCKDステージ3-4および腹膜透析症例や腎移植前後の症例にも探索を拡大していくことを検討している。また,少数菌の増加を防げる優勢菌の移植により腸内Dysbiosisの進展を防ぐことができるか、について介入研究も視野に入れる。
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Causes of Carryover |
アメリカ腎臓学会をはじめとする遠方の学会への参加がかなわず旅費・学会参加費として想定していた金額に差が生じた。その分を利用して、残血清で尿毒素物質の追加測定を検討している。また2024年度は、学会参加予定も多く、論文化にあたって校正費用や投稿費用が掛かる予定である。
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