2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドを用いたLMX1B変異に伴う腎症の病態解明
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22K16246
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
田中 悦子 宮崎大学, 医学部, 助教 (00612376)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | LMX1B / 腎臓 / オルガノイド / iPS細胞 / ヒト / ポドサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
LMX1B遺伝子は、腎臓で血液から尿を濾過するろ過装置である糸球体の発生や、糸球体の中で濾過膜を形成する上皮細胞とスリット膜の形態および機能維持に関与することが知られている。そして、LMX1B遺伝子異常は蛋白尿および腎機能障害を来すLMX1B遺伝子関連腎症の原因であることがわかっているが、その病態は明らかになっていない。マウスのモデルではヒトの病態を再現できておらず、ヒト特有の病態モデル作製が期待されている。近年、ヒトiPS細胞から腎臓オルガノイドの分化誘導法が確立され(Cell Stem Cell, 2014;2;14:53-67)、ヒト細胞由来の糸球体上皮細胞およびスリット膜の構造をin vitroで再現できるようになった。そこで我々は、LMX1B変異を導入したヒトiPS細胞から腎臓オルガノイドを誘導し、ヒトLMX1B関連腎症の病態モデルを作製と病態解析を試みている。 まず、健常者由来ヒトiPS細胞のLMX1B遺伝子にCRISPR/Cas9システムを用いて、ゲノム編集を行った。iPS細胞の培養とgRNAのデザインを行い、エレクトロポレーション法でゲノム編集した。エレクトロポレーション後のバルク細胞集団から抽出したゲノムDNAのPCRおよび制限酵素切断、シークエンス解析を行い、ゲノム編集が成功したことを確認した。限界希釈法によるサブクローニングを行い、ノックアウト株と正常株をそれぞれ3つずつ樹立できた。しかし、ヘテロ変異株が得られず、再度、同様の方法でゲノム編集を行った。2回目のエレクトロポレーション後のバルク細胞に変異導入が成功した細胞が含まれていることが確認できており、サブクローニングを開始する。今後、樹立した株ごとに腎臓オルガノイドへの分化能を確認し、LMX1B腎症の病態モデルとして解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としていた、LMX1Bノックアウト株を樹立することができた。ゲノム編集の効率が予定よりも悪く、ヘテロ変異株の樹立ができていないこと以外は、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロ変異株の樹立するため、2回目のゲノム編集を行い、バルクの細胞集団にゲノム編集が成功した細胞が含まれていることを確認した。サブクローニングを行い、ヘテロ変異株の樹立を目指す。また、各細胞株から腎臓オルガノイドを作製し、正常細胞株から作製した腎臓オルガノイドおよび患者腎生検病理所見と比較して、病態モデルとしての有用性を解析する。
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Causes of Carryover |
一部の試薬および材料を、当教室で購入したものの残りでまかなうことができたため、予定の金額を下回った。 サブクローニングに大量のiPS細胞専用培地およびコーティング剤、成長因子が必要であり、これらは高額である。これから2回目のサブクローニングを行う予定であり、繰り越した金額は使用する予定である。
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