2023 Fiscal Year Research-status Report
毛孔性紅色粃糠疹V型を含めたCard14関連炎症性角化症の病態解明への挑戦
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22K16261
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 剛典 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20908884)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 毛孔性紅色粃糠疹 / Card14 / シングルセル解析 / IL-17 / IL-36 |
Outline of Annual Research Achievements |
毛孔性紅色粃糠疹5型のモデルマウスである、Card14ノックインマウスの皮膚組織を用いてマイクロアレイ解析とシングルセル解析を行った。その結果、免疫細胞から分泌されるIL17、角化細胞から分泌されるIL36が、病態形成に強く関与する炎症性サイトカインであることがわかった。シングルセル解析では、主に表皮の顆粒細胞、真皮の繊維芽細胞、免疫細胞のTh17細胞において遺伝子の動きが大きく、これらが病態形成に特に関与する細胞集団であることがわかった。また、毛包内ケラチノサイトの1つである外毛根鞘細胞で、IL17の受容体であるIL17RAのタンパク発現が亢進しており、さらに外毛根鞘細胞では、角化亢進に関与するKrt16やPla2g2fの遺伝子発現が亢進していることもわかった。すなわち、本モデルマウスの病態形成において、Th17の分泌するIL17が、毛包内ケラチノサイトである外毛根鞘細胞に作用し、毛包内での角化を亢進させている可能性がある。毛孔性紅色粃糠疹の臨床症状の特徴の一つに毛包角化があり、この結果は毛包角化の形成メカニズムの一部を示していると考えられる。また、毛孔性紅色粃糠疹の類縁疾患である乾癬の患者や乾癬のモデルマウスでは通常発現が亢進している、S100タンパクのS100a7と、角化亢進を示すKrt17が、本モデルマウスにおいては上昇しないことが分かった。毛孔性紅色粃糠疹と乾癬は時に臨床症状が類似し鑑別が困難になるが、S100a7とKrt17の発現の違いが、両者を区別するマーカーとなる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究計画通りに進んでおり、研究結果の一部を論文化し、国際雑誌にアクセプトされた。
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Strategy for Future Research Activity |
本モデルマウスに、抗IL-17抗体が有効であることは確認したが、抗IL-17抗体ははすでに乾癬においては臨床の現場で使用されている薬剤である。シングルセル解析結果などさらに分析し、これまでにない治療対象となり得るタンパクの同定を目指す。タンパクが同定できた場合は、それをモデルマウスに投与し、有効性を確認する。
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Causes of Carryover |
上がってきた実験結果の解析を主に行っていたため、支出自体は少なかった。今後は、治療実験に使用する抗体製剤の購入などにあてる予定。
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