2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚移植片対宿主病におけるレジデントメモリーT細胞の病態進展・維持機構の解明
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22K16276
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久保田 典子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10844847)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レジデントメモリーT細胞 / メモリーT細胞 / 移植片対宿主病 / 自己免疫疾患 / CD8T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は昨年度、皮膚移植片対宿主病(GVHD)において、角化細胞を標的とするメモリーT細胞が、皮膚組織中にてレジデントメモリーT細胞(TRM)として留まるのか、またTRMが皮膚GVHDの慢性化や増悪に関与するのかを解明する研究を行った。 まず、GVHD様自己免疫性皮膚粘膜疾患誘導モデルマウスにおける、皮膚でのTRMの動態を解析した。keratin 14 promoter-membrane ovalbumin transgenic(K14-mOVA Tg)マウスにGFPが組み込まれたOVA特異的CD8 T細胞(OT-I細胞)を移入しGVHD様皮膚症状を惹起させ、FACSにて経時的にマウス耳介皮膚組織中のOT-I細胞を解析したところ、OT-I細胞数は移入後8日目に最大になるが、その後も一部は皮膚に残ることが分かった。さらに、皮膚に残ったOT-I細胞の多くがTRMに分化し、CD122を発現していることが分かった。このCD122はCD132と二量体を形成し、IL-15の受容体としてメモリーT細胞の生存と維持に関与していることが知られており、主にメモリーT細胞上に発現している。そこで次に、K14-mOVA Tgマウスに抗CD122抗体を投与し、皮膚GVHDの進展が抑制されるか否かを解析した。K14-mOVA TgマウスにOT-I細胞を移入し、皮膚にOT-I由来のTRMが増加し始める移入後7日目より抗CD122抗体を投与したところ、急性GVHD様の皮膚粘膜症状は軽快し、続いて起こる慢性GVHD様の線維化も抑制された。耳介皮膚組織中のOT-ITRMのFACS解析では、急性/慢性GVHD様皮膚粘膜症状を発症する移入後14日目と28日目において、いずれも抗CD122抗体を投与することでOT-ITRM数が減少していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が所属する研究室では、表皮角化細胞特異的に卵白アルブミン(OVA)遺伝子を導入したkeratin 14 promoter-membrane ovalbumin transgenic(K14-mOVA Tg)マウス(米国国立衛生研究所より譲渡)を所持している。申請者のこれまでの研究で、K14-mOVA TgマウスにOVA特異的CD8 T細胞(OT-I細胞)を移入してGVHD様皮膚粘膜症状を発現させるプロトコールを確立し、手技も十分に習得していたため、K14-mOVA Tgマウスを用いた実験系においては、比較的スムーズに研究を進めることができたと考える。また、耳介皮膚組織より細胞を分離しFACSを施行する解析方法も、申請者のこれまでの実験で行ってきた手法であり、解析においてもあまり失敗することなく順調に進めることができた。 また、本研究においてTRM細胞の機能を評価するために欠かせない抗CD122抗体(ChMBC7)も、JN Biosciences社の御好意により譲渡を頂け、コロナ渦により抗体精製が難しかった時期もあったとお聞きしたが、研究期間中、絶え間なく抗体を供給頂けた。何より、研究計画時に見込んでいた通りに、抗CD122抗体の投与によりモデルマウスにおけるGVHD様皮膚粘膜症状が抑制されたことは研究上の大きな進展であった。 また、申請者は筑波大学附属病院に所属し、臨床も行っている立場であるが、使用マウスの管理において、生命科学動物資源センターや皮膚科学教室に所属する後輩の協力を得られている。実験においても、皮膚科学教室に所属する後輩の協力や、大学院在籍時の指導教官から引き続き助言や、協力を頂いて、限りある時間を有効活用しながら、道筋を立てて計画的に研究を行なえている。
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Strategy for Future Research Activity |
抗CD122抗体の投与で抗原特異的TRM数が減少し、急性/慢性GVHD様皮膚粘膜症状が抑制されたという、これまでの申請者の実験結果をふまえ、これまでの実験では皮膚にOT-I由来のTRMが増加し始める移入後7日目から抗CD122抗体を投与したが、急性GVHD様皮膚症状が完成した14日目からの抗体投与でも慢性GVHD様皮膚症状が抑制されるか否かを解析する実験を進める。具体的にはK14-mOVA TgマウスにOT-I細胞を移入し、移入後14日目より抗CD122抗体を投与し、28日目における皮膚症状の程度を、耳、足、尾のびらんや脱毛の範囲を点数化して合計を算出した慢性GVHDスキンスコアを用いて評価する。また線維化の評価として、耳介皮膚病理組織で表皮顆粒層から脂肪織上までの真皮厚を計測し、病理学的に評価すると共に、耳介皮膚におけるCol1a1やCol1A2などの線維化に関連する遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析し評価する。 また、CD122は皮膚のTRMだけでなく、他のメモリーT細胞上にも発現しているが、本モデルマウスにおいて、抗CD122抗体投与がそれらのメモリーT細胞にも影響しているか、皮膚所属リンパ節中のエフェクターメモリーT細胞やセントラルメモリーT細胞の数や動態もFACSを用いて解析する。 申請者は筑波大学附属病院に所属し、本年度も臨床も行っていく立場であるが、昨年度と同様に使用マウスの管理や、実験をするあたり、生命科学動物資源センターや皮膚科学教室に所属する後輩にも協力を頂きながら、臨床と並行してうまく時間を活用し、効率的に研究を進めていく予定である。また引き続き、大学院在籍時の指導教官から助言や、協力を頂いて、論文作成にも意欲的に取り組む。
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Causes of Carryover |
実験が順調に進んだため、当初の予定よりも少ない額で実験を進められたため。 翌年度も実験計画に基づき複数の実験を行い、論文作成も行う予定である。
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