2022 Fiscal Year Research-status Report
エピゲノム解析によるMRSAのアウトブレイク株解析と予防法の樹立
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22K16278
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 由里子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (70915272)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | MRSA / アウトブレイク / 多剤耐性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は皮膚の重症感染症の原因となる他、アトピー性皮膚炎の病状を悪化させるなど、皮膚に悪影響を及ぼす細菌の代表であり、院内アウトブレイクがしばしば問題となっている。代表者は最近、単施設内で1つのMRSA株がエピゲノム進化によって抗生剤寛容性、外来遺伝子取り込み能、バイオフィルム産生能を獲得しつつアウトブレイクを引き起こしたことを世界で初めて突き止めた。しかしどのような環境・ホスト要因がMRSAのエピゲノム進化を引き起こすかは依然不明である。本研究ではアウトブレイク株に特有のエピゲノム変化パターンを同定し、細菌学的根拠のある予防法や治療法の確立に繋げることを目指して、MRSA臨床株に対してエピゲノム解析を行っている。 本年度はまず、単一施設でアウトブレイクを起こしたMRSAの複数の臨床株に対してエピゲノム解析を行なった。細菌のとりうるメチル化形式を網羅するため、複数のエピゲノム解析手法を組み合わせて検討を行った。その結果、転写効率に関わる特定の遺伝子に変化が集中して見られることがわかった。同遺伝子の欠損株を共同研究者と作成し、欠損株の表現型をin vitroで解析することで、アウトブレイク株の臨床的特徴を引き起こした遺伝子発現やエピゲノム進化を突き止めることができている。エピゲノム解析に加えて、動物実験モデルを用いた感染実験やin vitroの細胞感染実験を行い、MRSAのアウトブレイク株が臨床的にもホスト体内で生存し病院内に蔓延りやすい性質となっていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、臨床株に対してエピゲノム解析を行い、原因遺伝子やエピゲノム修飾部位を追求することができた。ゲノムサンプリングの方法により長い遺伝子領域が切れてしまっており遺伝子のアノテーションにエラーがでうることがわかったので、より精度の高いゲノム解析を行うため別の手法でサンプリングしてゲノム解析も再提出し直している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在提出中の解析結果を待って、当初の目標であるエピゲノム解析はほぼ終わるため、追加の実験として特定遺伝子の欠損株に関する表現型解析を行い、MRSA のアウトブレイクを起こす菌の進化をより普遍的に証明して、本年度中に論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
共同研究者のサーバーでゲノム解析をする必要があったため、ゲノム解析については共同研究者の予算で捻出していただいた。そのため本年度の中心的なプロジェクトについては本研究費は大きくは使用しなかった。本年度の研究費はエピゲノム解析以外の、In vitroの実験に関して試薬を主に購入した。エピゲノム解析がひと段落し、今後はIn vitro実験が主体となるため、次年度としてはモデル動物の購入や試薬購入、論文投稿料などでおおむね計画通り使用する予定となっている。
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Research Products
(1 results)