2022 Fiscal Year Research-status Report
Tet2変異によるクローン性造血と造血器腫瘍発症機構の解明
Project/Area Number |
22K16314
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮井 優里奈 (宮島優里奈) 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (70838218)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | TET2 / CHIP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、DNA脱メチル化酵素TET2欠損によって加齢性に増殖した前駆細胞集団の性質および遺伝子発現制御機構の変化を明らかにすること、さらに、当該細胞群の異常増殖による造血器腫瘍発症への寄与を明らかにすることを目的としている。本年は、TET2欠損マウスの単細胞トランスクリプトーム解析により見出した、加齢性に増加する腫瘍クローンと考えられるCD62L+細胞の性質と機能の解析を中心に研究を遂行した。 (1)CD62L+細胞の性質に関する解析 TET2欠損マウス由来のCD62L+細胞の分化能を調べるために、フローサイトメトリーにより当該細胞群を単離し、コロニー形成細胞アッセイを行った。野生型マウス由来のCD62L+細胞に比べて、TET2欠損マウス由来のCD62L+細胞ではCFU-GMへの分化が亢進し、一方でCFU-Gへ分化する細胞の割合が減少していた。さらに、トランスクリプトーム解析を元に、受容体の遺伝子発現を精査し、TET2欠損マウス由来のCD62L+細胞で高発現する受容体を明らかにした。この受容体に対するリガンドを用いて培養を行ったところ、野生型マウス由来の当該細胞群に比べて細胞増殖の亢進が認められた。 (2)CD62L+細胞の病態への寄与 放射線照射マウスに、TET2欠損マウスから単離したCD62L+細胞を移植し、動態解析を行った。移植後のマウスの各組織から細胞を単離し、フローサイトメトリーにより解析を行ったところ、移植したCD62L+細胞由来の細胞群は特に肺に移行し分化することが明らかになった。さらに、移行後のTET2欠損マウス由来のCD62L+細胞では、野生型マウス由来のものに比べて分化後の細胞の形態および増殖に差が認められた。今後、移植後のマウスについて、造血器腫瘍に関わる病態が確認できるのか精査したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年においては、実施計画に基づいてCD62L+細胞の性質および機能に焦点を当て解析を行った。病態への寄与を確認するための移植実験も並行して行うことで、長期的な期間が必要な解析についても効率よく遂行している。現在は、CD62L+細胞の遺伝子発現制御異常について検証するために、ChIPシークエンス解析の条件検討を進めている。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
移植実験において、引き続き病態への寄与についてフローサイトメトリーや組織学的解析によって分子・細胞動態の詳細な観察を遂行する。また、CD62L+細胞における遺伝子の発現制御機構について明らかにするために、メチル化シークエンス解析およびChIPシークエンス解析を実施する。実施条件についての検討も進んでおり、細胞を単離次第実施する予定である。これまでのトランスクリプトーム解析のデータとあわせて、当該細胞群の性質およびTET2によるエピジェネティックな遺伝子発現制御機構に着目する。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬の調達が間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。購入できなかった試薬を翌年度に購入するため、物品費として計上する。
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