2022 Fiscal Year Research-status Report
ベーチェット病患者唾液の好中球細胞外トラップ誘導能の低下原因の解明
Project/Area Number |
22K16337
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
益田 紗季子 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (10763617)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ベーチェット病 / 好中球細胞外トラップ / NETs / 口内炎 / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベーチェット病は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍(口内炎)を主症状とし、軽快と発作を繰り返しながら進行する難治性疾患である。何らかの遺伝要因にウイルス感染や細菌感染などの環境要因が加わり、過剰な免疫応答や炎症が引き起こされると考えられているが、その病態生理には未だ不明な点が多い。健常者の唾液には好中球細胞外トラップ(NETs)誘導能があり、唾液により誘導されるNETsは口腔内の除菌に働いているが、ベーチェット病患者の唾液ではNETs誘導能が低下しており、それが口腔内の感染防御機構の破綻、そして口内炎の原因となっている可能性がある。本研究では、ベーチェット病患者の唾液のNETs誘導能の低下原因や口内炎の発生原因を明らかにすることを目的としている。 今年度は健常人およびベーチェット病(疑い含む)患者唾液のNETs誘導活性の有無、口腔潰瘍の有無、SLX量(唾液中のNETs誘導因子)、MPO-DNA complex量(NETs分解産物)などについて、健常人とベーチェット病患者で比較した。健常人唾液と比較し、ベーチェット病患者唾液ではSLX量が低下し、特に口内炎のあるベーチェット病患者で低下していた。 しかしながら、NETs誘導活性のないベーチェット病患者唾液においてSLX量の低下は認められず、NETs誘導活性の低下にはSLX以外も関連している可能性が考えられた。 また、治療によりNETs誘導能が回復し、口内炎も改善した複数のベーチェット病症例について、治療前後の唾液のプロテオミクス解析を実施した。今後はNETs形成や口内炎の発症に関与する可能性があるタンパクを抽出する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
唾液と各因子の関連解析は概ね終了し、口内炎を有するベーチェット病患者唾液のSLX量の低下を見出した。唾液中のNETs誘導因子の一つであるSLXの低下がNETs誘導活性低下の一因となっている可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
治療前後の唾液を比較したプロテオミクス解析により抽出されたタンパクについて、唾液サンプル中のタンパク量を測定し、口内炎の有無や NETs誘導活性の有無などと関連があるかどうかを解析する。抽出したタンパクがNETs形成に与える影響についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りと考えている。次年度はプロテオミクス解析により抽出したタンパクのNETs形成に与える影響を調べるため、リコンビナントタンパクや細胞、キットの購入などに充てる予定である。
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