2022 Fiscal Year Research-status Report
診断困難であった性感染症原因菌の同定と抗菌薬耐性の同時迅速検査法
Project/Area Number |
22K16376
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
酒井 純 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20814768)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 淋菌 / フルオロキノロン / gyrA / 一塩基変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、薬剤耐性に寄与する各ゲノム上の一塩基変異(SNP)を明瞭に区別しつつ、同時に尿路感染症の起因菌を推定できるMultiplex-PCR増幅系(多項目同時検査)を構築することが目的である。当該年度は、尿路感染症としても頻度の高い淋菌(Neisseria gonorrhoeae)のDNAを鋳型として、淋菌の同定と同菌のフルオロキノロン耐性を引き起こす主原因、gyrA遺伝子上のSNP変異を同時に測定できる検出系を設計した。方法としてDNA精製後検体を外部注文し、作成する新規検出系の精度を判定するために使用した。また、Primer Explorer V5(http://primerexplorer.jp)を用いて淋菌の検出を可能にするプライマーを設計し、NgS primerとして外部業者に注文した。また、ゲノム・データベースからgyrA遺伝子における保存領域を明らかにし、Primer Explorer V5を用いて候補プライマーの設計を同様に行った。プライマー設計後、SNPのない配列に対してのみ特異的結合を示すLocked Nucleic Acid (LNA)をプライマー中に組み込み、フルオロキノロン感受性株(SNPなし)のみに反応するgyrAプライマーを作成し、同時に検出できるか確認した。結果として淋菌全5株(100%)でNgS primersで遺伝子増幅を認めた。一方、淋菌以外で尿路感染症を引き起こしうる、またはコンタミネーションで検出しうる非淋菌性微生物では反応が見られなかったことから、本プライマーの特異度が良好であると判断された。同時にgyrA野生株では、gyrAプライマーで反応が見られた一方、他SNP変異のある変異株では反応が見られず、本検出系は淋菌とそのフルオロキノロン耐性の有無を同時検出することが可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
淋菌プライマーとgyrAプライマーの感度・特異度が良好であり、かつ結果までの必要時間も比較的短時間に行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は淋菌以外のウレアプラズマ、マイコプラズマジェニタリウムなどの、通常の尿培養検査で検出できない微生物を標的にするプライマーを作成しつつ、それらの薬剤耐性遺伝子を淋菌と同様の方法で検出できるか検証する。ウレアプラズマに関しては、保存DNAが少ないため、大阪医療センターなどの保存株を複数所有している機関に連絡し、鋳型DNAとして入手を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
淋菌以外のウレアプラズマ・マイコプラズマ等の菌株を収集・購入する費用と、プライマーの合成委託費用が必要なため。また、PCR実施にあたり、酵素や溶媒・DNA精製キットなどの消耗品の購入が随時必要なため。
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