2022 Fiscal Year Research-status Report
口腔レンサ球菌の網羅的比較ゲノム解析による感染性心内膜炎起因菌の遺伝的特徴の探索
Project/Area Number |
22K16380
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
奥野 未来 久留米大学, 医学部, 助教 (30814462)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔レンサ球菌 / 全ゲノムシークエンス / NGS / ゲノム比較解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染性心内膜炎(Infective endocarditis; IE) は、細菌が心臓の内腔を覆う心内膜の表面または弁膜に感染して感染巣を形成することで起こる。IEの感染経路の一つとして口腔内常在細菌の血液への侵入が考えられているが、どのような口腔内常在菌がIE発症ポテンシャルを有しているのか不明である。また、IE発症に関わる病原因子も明確になっていない。本研究は、IEの主要な起因菌の一つであるStreptococcusに焦点を当て、IE発症に関わる病原因子候補を探索するために、IE起因菌の全ゲノムシークエンスデータを用いた比較ゲノム解析に取り組んだ。 感染性心内膜炎患者の血液培養サンプルから分離されたS. gordonii 24株, S. mutans 20株、ヒト口腔内から分離されたS. gordonii 14株, S. mutans 8株を収集し、ショートリードによる全ゲノムシークエンスを実施した。また、公開データベースから健常な日本人の口腔内から分離されたS. mutans 約70株の全ゲノムシークエンスデータを取得した。ドラフトゲノムの構築、遺伝子予測を実施し、core-geneによる系統解析を実施した結果、口腔内常在菌とIE起因菌に系統的な偏りは見られなかった。また、IE起因菌に偏在する遺伝子は確認されなかったため、現在、公開データの追加作業と遺伝子のvariant解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IEの起因菌として、レンサ球菌の中でも多様な菌種が分離されるため、同一種の菌株の収集が難しいと予想されたが、S. gordonii, S. mutansの感染性心内膜炎起因菌および口腔内由来株の収集とシークエンスをすることができた。また、比較対象となる口腔内由来の菌株に関しては、健常な日本人由来のS. mutans 約70株を公開データベースから収集することができたため、同一菌種内で日本人のIE起因菌と口腔内常在菌の大規模な比較ゲノム解析が実施可能なデータセットを用意することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
IE起因菌と口腔内常在菌で偏在する遺伝子の探索だけでなく、variantにも着目して両者の遺伝的な違いを明らかにする。また、一部の菌株についてはOxford Nanoporeデータを追加し、完全ゲノムを決定し、より詳細な比較解析を実施する。
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Causes of Carryover |
概ね予定通り使用した。差額は次年度の物品費として使用する。
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