2023 Fiscal Year Annual Research Report
口腔レンサ球菌の網羅的比較ゲノム解析による感染性心内膜炎起因菌の遺伝的特徴の探索
Project/Area Number |
22K16380
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
奥野 未来 久留米大学, 医学部, 講師 (30814462)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔レンサ球菌 / 比較ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染性心内膜炎の発症率は3-7/10万人・年と推定されており、決して多くはないがいったん発症すると重篤な転帰をたどり、手術や長期入院を要するために患者の負担が大きい疾患の一つである。また、高齢者の罹患率が高く、超高齢化社会を迎える本邦では患者の増加が予想されており、発症メカニズムの解明および効果的な予防法の開発に取り組む必要のある疾患だと言える。感染性心内膜炎の主要な起因菌は黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、腸球菌などが挙げられるが、特にレンサ球菌の一部は口腔内常在菌でありながら、感染性心内膜炎などの侵襲性感染症の起因菌となる。しかし、感染性心内膜炎の発症に関わる病原因子の正体はいまだに明らかになっていない。本研究は、口腔レンサ球菌に焦点を当てて、感染性心内膜炎起因菌の収集、ゲノム情報の整備および起因菌と口腔内常在の比較ゲノム解析を実施し、新規の病原因子の探索に取り組んだ。S. murans, S. gordoniiについて、起因菌と健常者の口腔内常在菌を収集し、公開データを活用して比較ゲノム解析をしたところ、起因菌と口腔内常在菌に系統的な差異は確認されなかった。次に、この2群のうち、片方の群に偏在するような遺伝子を網羅的に探索したが、有意差のある遺伝子は見つからなかった。感染性心内膜炎の発症に関わる因子は特定の遺伝子の獲得または欠損ではなく、遺伝子のバリアントや発現制御領域による差異である可能性が考えられた。
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