2022 Fiscal Year Research-status Report
モデルマウスを用いたミトコンドリアチオラーゼ欠損症の病態解明
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22K16391
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大塚 博樹 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (20771372)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ノックアウトマウス作成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケトン体は糖質が枯渇する状況における重要なエネルギー源である。ケトン食療法は代謝異常症だけでなく難治性てんかんにも行われているが、ケトン体の役割にはまだ不明点も多い。まず本研究ではケトン体代謝酵素であるミトコンドリアアセトアセチル-CoAチオラーゼ(T2)欠損症のノックアウトマウス解析を通して基礎的なエビデンスを提供することを目的としている。T2(ACAT1)欠損症はケトン体利用障害、イソロイシン異化障害をきたす。ヒトT2欠損症患者において、今まで誘因と考えられてきた重篤なケトアシドーシス発作がなくても基底核病変をきたす症例が報告されたため、T2欠損マウスを作成し食餌中のイソロイシン負荷と基底核病変が関連するかどうか検索する。 また並行して基質特異性のオーバーラップがあるミトコンドリア中鎖3-ケトアシル-CoAチオラーゼ(T1)も解析し、T2、T1の生理的な役割について明らかにする。ミトコンドリアβ酸化系におけるT1(ACAA2)の基質特異性は短鎖や中鎖の脂肪酸であるが、短鎖脂肪酸はT2とオーバーラップがある。ヒトT1欠損症は発見されておらず、基質特異性のオーバーラップのため症状が出ないか、胎生致死の可能性がある。T1欠損マウスを作成し、胎生致死か、空腹負荷による変化はどうか検索する。 以上の目的のため令和4年度はノックアウトマウス作成と通常の飼育を行い、標準的な成長の推移などを確認している。また空腹負荷試験の至適週齢や血液検査結果のデータ収集も並行して開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の課題であるノックアウトマウス作成は完了しており、通常飼育での表現型確認などに着手している。本年度には少しずつ着手予定である負荷試験を前に、標準的なデータ収集に着手することができているため、比較的順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は表現型解析に着手する。マウスは通常の食餌のほか、イソロイシン負荷、ケトン食で飼育する。前者はT2欠損に、後者はT1欠損に対して負荷となる。体重増加、行動異常、ケトアシドーシスの有無、尿有機酸、中枢神経・肝臓病理などについて解析する。まず生理的に脂肪負荷が強い授乳期のマウスで解析を行い、その後に上記の食餌負荷や空腹負荷試験を行う予定である。 T2ノックアウトマウスは空腹負荷のケトアシドーシス発作により基底核病変をきたすのか、病理検査を行う。T1ノックアウトマウスは空腹負荷により低血糖、脂肪肝をきたすと考えられ、肝臓の病理検査を行う。
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Causes of Carryover |
ノックアウトマウス作成にかかる経費をおさえることができたため、今後の表現型解析に使用する。具体的にはまず特殊飼料での食餌が必要なのでイソロイシン添加飼料およびケトン添加飼料を用意する。また野生型と各ノックアウトマウスの病理検査を行う。
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