2022 Fiscal Year Research-status Report
CD8+T細胞の分化における転写因子FoxO1の制御メカニズムの解明を目指して
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22K16398
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮地 康高 九州大学, 大学病院, 助教 (00801515)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 1型糖尿病 / CD8+T細胞 / FoxO1 |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病は、膵島炎を病理学的特徴とする自己免疫疾患で、CD8+T細胞は膵島炎をおこした膵島で最も多く認める炎症細胞である。T細胞が分化するときに、複数の転写因子が協調して働くが、転写因子FoxO1は主要なものとして知られている。 研究代表者はFoxO1阻害薬で前処置したCD8+T細胞を刺激すると対照群と比較してIFNgの産生と分泌が減少することを確認している。 当該年度は、CD8+T細胞におけるFoxO1が制御する遺伝子を明らかにするために、2種類のFoxO1阻害薬を用いて、自然発症1型糖尿病モデル(NOD)マウスの脾臓から単離したCD8+T細胞へ添加をおこない、抗CD3/CD28抗体で刺激後24時間で細胞を回収して、RNA-seq解析を実施した。発現の変動が大きな上位100遺伝子を抽出したところ、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、1型糖尿病との関連が報告されている遺伝子が8個含まれていることが明らかとなった。 加えて、NODマウスの糖尿病発症および進展抑制の検証を試みた。NODマウス(メス)は通常70-80%で糖尿病を発症するとされるが、当該年度の検討では、30週齢までの累積発症率が想定よりも非常に低いことが明らかとなった。 最後に、FoxO1阻害薬によるミトコンドリア機能への影響を探索するために、細胞外フラックスアナライザーを用いた検討を開始した。細胞数や試薬の濃度を検討し、現在、最適な実験条件が明らかとなりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD8+T細胞のRNA-seq解析の結果から、1型糖尿病のGWAS関連遺伝子がFoxO1阻害薬により複数個変動することが明らかとなった。この結果は、CD8+T細胞におけるFoxO1が1型糖尿病の病態における重要性を示唆するものと考える。その他の変動遺伝子については、これまでの既報と合致するものも多く、信頼性も高い。本研究の初年度に変動遺伝子のリストが入手できたことから、2年目以降の進捗も期待できる。 一方で、個体レベルでの1型糖尿病発症の予防と進展抑制には、NODマウスを用いた動物実験が必要であるが、糖尿病発症率が予想よりも低かったことから、一部の実験に変更が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
FoxO1阻害薬による変動遺伝子のリストから、T細胞の分化や1型糖尿病の進展抑制に効果がある幾つかの候補遺伝子を選択して、機能解析をおこなう。 NODマウスを用いて、幾つかの代謝ストレスを与えることにより、確実に糖尿病を発症するモデルの作成をおこなう。
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Causes of Carryover |
実験の進捗により、RNA-seq解析の費用と確実に糖尿病を発症するモデルマウス作成費用として90万円の前倒し支払いを申請した。RNA-seq解析ならびにモデルマウス作成のための飼料と試薬の準備は完了したが、マウスの購入を次年度に先延ばした。次年度は、マウスの購入と既に購入した飼料・試薬を用いて確実に糖尿病を発症するモデルマウスの作成をおこあう。
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