2022 Fiscal Year Research-status Report
マウス透明化による膵島オートファジー不均一性の評価とその病態生理学的意義の検討
Project/Area Number |
22K16402
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
青山 周平 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (90910563)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オートファジー / 膵β細胞 / 膵島 / 糖代謝異常 / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、まず初めに固定した膵臓の透明化およびライトシート顕微鏡による観察手法の確立を行った。マウスをPFA固定した後に膵臓を摘出し、既に市販されているCUBICを使用し膵臓の透明化を行った。透明化の途中過程でPropidium iodide染色によって核を染色し、ライトシート顕微鏡で観察したところ、想定通り594nmの波長で膵島や膵管といった膵内構造が観察可能であった。次にオートファジー活性モニターマウスである、pHluorin-LC3-mCherryマウスを用いて同様の検討を行った。Propidium iodide染色では、mCherryの蛍光波長と重なるため、Red-dot2を用いて核染色を行った。しかし、mCherryの傾向波長である594nmによる観察時に核染色の漏れ込みを認めた。当施設のライトシート顕微鏡では、核染色に汎用されているDAPIの波長が装備されていないため、核染色は行わず、pHluorin-LC3-mCherryのみの自家蛍光を観察した。mCherryの蛍光強度は透明化におけるpHの変化後もライトシート顕微鏡によって観察可能であったのに対し、pH感受性の高いpHluorinは透明化の過程によって蛍光強度が著しく減弱していた。しかし我々の作成したマウスは、pHluorinとmCherryの蛍光強度比をとることによりオートファジー活性を評価可能であるため、典型的なオートファジー刺激である飢餓条件下での変化をライトシート顕微鏡で撮影し、Image-Jを用いて定量評価した。24時間飢餓刺激を行ったマウスの膵臓では、コントロールと比較してpHluorin/mCherry比の低下を認めたことから、本マウスにおける透明化による膵臓全体のオートファジー活性の評価は可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画では、2022年度中に市販のCUBICを用いた臓器の透明化を行い、その手技を確立することを目指していた。上記に記載した通り、PFA固定を行ったマウスの膵臓は、市販されている2種類のCUBIC溶液を用いて透明化が可能であった。複数回、同一条件下において透明化を行ったところ、再現性をもって透明化させ、ライトシート顕微鏡による観察において想定範囲内の画像も取得できた事から、膵臓の透明化手技は確立されたと考えている。一方で当施設で使用可能なライトシート顕微鏡では、一般的に使用されている核染色であるDAPIを観察可能なレーザーを搭載していないことから、本実験で使用するオートファジー活性モニターマウスの蛍光波長と重複しない核染色方法はまだ確立できていない。また、オートファジー活性モニターマウスに使用されているpHluorinのpH感受性が高いことから、透明化の過程によって蛍光が減弱しており、mCherryとの比率によってオートファジー活性は評価できるものの、今後は蛍光の増幅方法を模索する必要があるかもしれない。上記を勘案して、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究によって、我々が作成したオートファジー活性モニターマウスを透明化し、膵臓全体のオートファジー活性を評価する方法は一定程度、確立したと考えている。今後は当初の計画通り、様々な糖代謝環境における個々の膵島内オートファジー活性の変化を評価する予定である。具体的には、インスリン受容体拮抗薬の投与や高脂肪食負荷によりインスリン抵抗性を増大させた際の変化を観察する。以前我々が行った検討では、インスリン抵抗性条件下では、同一膵島内における個々の膵β細胞のオートファジー活性が不均一化する現象がみられたことから、同様の現象が個々の膵島においても認められるかを念頭に評価を行っていく。また膵臓の透明化および核染色によって、膵島と膵管の位置関係を把握することが可能であったことから、オートファジー活性モニターマウスの組織特異的抗原に対する染色により、膵管と膵島、血管と膵島といった膵臓内における膵島の分布とオートファジー活性の関係性も評価したいと考えている。
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