2023 Fiscal Year Research-status Report
サイログロブリン異常症の長期臨床像解明と機能解析系構築
Project/Area Number |
22K16420
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
中尾 佳奈子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, (非)研究員 (50723441)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 先天性甲状腺機能低下症 / サイログロブリン異常症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新生児マススクリーニングで発見されたTG異常症患者の長期臨床像を明らかにすることと、TGタンパク質の機能解析系を構築し、TG遺伝子のミスセンス変異が機能低下に至る機構を分子-細胞レベルで明らかにすることの2つである。そのために行う研究方法は、TG異常症患者の臨床情報収集、TG安定発現HEK293細胞株による一連の機能解析実験(タンパク質発現、細胞内局在、分泌能の評価)、立体構造モデリング解析の3つである。 2023年度は、新生児期に診断されて治療が開始されたTG異常症2名の臨床情報収集を追加し、計30名の情報収集を完了させた。その結果、甲状腺切除術を受けた患者が2名、穿刺吸引細胞診を行った患者も3名いたが、悪性所見を認めた患者は1名もいないことが確認された。これは新生児マススクリーニング導入以前に診断された患者群では、若年成人期に半数以上が甲状腺がんを合併していたという過去の報告と異なり、新生児期に診断され治療されている患者では、甲状腺がんの合併リスクが低い可能性が示唆される重要な新規知見である。細胞実験では、TGのC末端側にEGFP、FLAGタグ、Hisタグを付加した融合タンパク質を組み込んだpiggy-bacバックボーン・プラスミド8種の構築が終了し、細胞内局在の評価と細胞外分泌の評価に進んだ。その結果、7種のミスセンス変異体のうち6種は分泌小胞ではなく小胞体に局在しており、細胞外には分泌されておらず、機能低下型変異であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、2022年度に新規診断したTG異常症患者の臨床情報収集を追加し、過去に遺伝子診断した症例27名とを合わせて、合計30名の臨床情報収集を完了させた。収集した情報は、甲状腺ホルモン(遊離T4、遊離T3)・TSH・TG値の年次推移、最終観察時までの成長・発達、甲状腺ホルモン補充量の推移、甲状腺手術歴(および病理診断)。エコー画像は匿名性に配慮した上で可能な限り実データを取り寄せ、特徴的所見の有無を評価した。得られた臨床情報は遺伝型に基づくサブグループに分けて比較解析を行った。また野生型と同様の手法で、ミスセンスTG変異7種のEGFPタグ付きプラスミド作製を完成させ、細胞内局在と細胞外分泌の評価に進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
採用3年目にあたる2024年度は、必要な検証実験や追加実験を行うとともに、研究成果をまとめて論文化に進む。
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Causes of Carryover |
学会出張を現地ではなくオンライン参加としたり、キャンペーン利用など試薬調達を工夫することによって、当初計画より経費使用が節約できたことによって生じた
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