2022 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病の発症と進展に性差が影響するメカニズムの解明
Project/Area Number |
22K16432
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
持田 曜弘 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (20931348)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | IAPP / オートファジー / 膵β細胞 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の発症や進展に与える性差の影響は、モデル動物の検討や臨床的知見に基づいて古くから指摘されている。本研究においては、耐糖能異常の程度に顕著な性差が認められるhuman islet amyloid polypeptide (hIAPP)のトランスジェニックマウスおよび膵β細胞株を用いた検討により、性差が糖尿病の病態に与える影響とその分子メカニズムを解明し、その新規知見に基づいて新しい糖尿病治療法の創出を目指す。 具体的には、まず性ホルモンがモデルマウスでの糖尿病発症に与える影響について検討を行う。そのためにhIAPP-Tgマウスの繁殖を行っている。 さらに、hIAPPの蓄積による膵β細胞不全のモデルを培養細胞の系で構築し、性ホルモンがもたらす影響とそのメカニズムの解析を計画している。これまでに、hIAPPのモノマーおよびそのオリゴマー類似として6x hIAPPのコンストラクトを作製し、MIN6細胞において発現を確認した。この実験系では細胞内でオリゴマーが形成されることを確認したが、細胞のviabilityには明らかな影響を認めなかった。一方で、培地にこれらのペプチドを添加した場合はCaspase-3の活性化が確認された。さらに、rat IAPPのペプチド添加ではCaspase-3の活性化はみられなかった。 以上から、培養細胞においては培地へのhIAPPのペプチド添加がその細胞傷害モデルとして適当であると考えられた。今後は、薬物的・遺伝学的な介入方法を検討し、性差が膵β細胞障害に与える影響を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにhIAPP-Tgマウスの繁殖を行い、in vivoでの解析を進めているが、十分な個体数が得られていないため計画通り進捗していない。 一方で、培養細胞を用いたhIAPPによる膵β細胞傷害モデルの作製を進めている。膵β細胞株であるINS1細胞を使用し、hIAPPのモノマーもしくはhIAPPをタンデムに6回連結した6x hIAPPをTetOnシステムによる発現系を作成して検討を行った。その結果、いずれもhIAPPのオリゴマーと推定される高分子の出現が確認されたが、細胞のviabilityに関しては特に変化がなく、活性型Caspase-3も検出されなかった。 そのため、細胞外のhIAPPオリゴマーが細胞毒性を発揮している可能性を考え、hIAPPおよびrat IAPP(rIAPP)のペプチドを使用して、INS1細胞のviabilityの変化を検討した。その結果、hIAPP処理により活性型Caspase-3が検出される一方で、rIAPP処理では認めなかった。 以上から、細胞外hIAPPオリゴマーの膵β細胞に対する毒性が明らかになり、培養細胞を用いた膵β細胞不全のモデルとなると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、hIAPP-Tgマウスの繁殖とカストレーションモデルの作製を進めるとともに、培養細胞を用いた実験系を使用し、hIAPPの毒性が性差の影響をどのように受けるかについて検討する。 (1)エストラジオールの代謝産物である2-Methoxyestradiol (2ME) が糖尿病モデルマウスにおいて膵β細胞の増殖を促進させ、耐糖能異常を改善することを以前報告している。この検討に基づき、2MEがhIAPPによる膵β細胞株毒性にどのような影響を与えるかを検討する。 (2)hIAPPの毒性に対しては、オートファジーが保護的に作用することが明らかにされている。この点においても、精査が影響している可能性が考えられる。我々は、TetOnシステムによりオートファジーの必須遺伝子であるAtg7をノックダウンできるINS1細胞を作成している(shAtg7-INS1)。この細胞株を使用し、hIAPPオリゴマーによる毒性がオートファジーに依存するかどうか、また前項の2ME投与がオートファジーに与える影響について明らかにする。
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