2022 Fiscal Year Research-status Report
肝インスリン抵抗性におけるRho family GTPase 2の病的意義の解明
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22K16434
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
鴫山 文華 金沢医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70808188)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肝インスリン感受性 / 脂肪肝 / 耐糖能異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、RND2遺伝子をマウスにおいて発現抑制することで、①肝臓のインスリン感受性、糖・脂質代謝に変化を認めるか、それらが全身にどの程度の影響を及ぼすのかを評価する。さらには、②肝臓の大きさや形態がどのように変わるのか、生化学的手法と病理学的な手法を組み合わせて、脂肪蓄積量、実質部分、間質部分に分けて評価し、実質の変化が肝細胞の数かサイズ、いずれの変化によるものなのかを検討する。 2022年度はRND2KOマウスを用いて糖代謝ならびに肝臓の中性脂肪蓄積量の評価を行った。通常食で飼育した13週齢の雄性RND2KOマウスおよび野生型(WT)マウスを用いた腹腔内糖負荷試験の結果、RND2KOはWTと比較して血糖値の60分値(RND2KO vs WT, n=17 vs 15, P<0.05)ならびにArea Under the Curve(AUC)が有意に低値であった。肝臓重量はRND2KOで大きく、肝臓内中性脂肪含有量に有意差を認めなかった。dbdbマウスに対しsiRNAを用いて肝臓特異的にRND2の発現を抑制した群(RND2 siRNA, n=9)とNegative siRNAを投与した群(Negative siRNA, n=10)で腹腔内糖負荷試験を実施した結果、siRNA投与から7日後に実施した腹腔内糖負荷試験では2群間で血糖値ならびにAUCに明らかな差は認めず、肝臓重量に関しても有意差はなかった。 今回我々が新たに作成したRND2KOマウスの検討の結果からRNDKOマウスではWTと比較して糖代謝が改善していることが明らかとなった。一方で、肝脂肪の有意な減少は認めず、siRNAを用いた急性の肝臓特異的なRND2の発現抑制でも糖代謝ならびに肝重量に有意差は認めず、長期的な全身でのRND2の抑制が脂質代謝を介さずに糖代謝に好影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人NAFLDにおいて肝インスリン感受性に影響する遺伝子としてRho family GTPase2(RND2)を有力な候補として同定し、RND2欠損マウス(RND2KO)を作成し、腹腔内糖負荷試験ならびに肝臓中性脂肪量の評価を実施し野生型マウス(WT)と比較した。腹腔内糖負荷試験の結果、RND2KOは糖負荷後60分の血糖値ならびにArea Under the Curveが有意に低値であった。マウスにおいて全身のRND2の発現抑制により糖代謝が改善することが明らかとなり、RND2が脂肪肝を合併する糖尿病治療において新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は腹腔内糖負荷試験のn数を増やすとともに、肝臓の脂肪蓄積に関して、中性脂肪のみならずインスリン感受性に関与していると考えられているジアシルグリセロールの測定も行っていく予定である。また今回13週齢のRND2KOとWTマウスで耐糖能を評価する試験を実施したが、もう少し週齢が増したマウスでの耐糖能や肝臓脂肪蓄積の評価も行っていく予定である。また得られた肝臓の組織から病理的解析も実施する。肝細胞の数やサイズを測定し2群間で差があるか検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
前任の東邦大学医学部から金沢医科大学への異動があり実験環境が変わり物品購入費や実験スケジュールに様々な調整が入り結果的に必要金額が多少変わった。次年度使用額に関してはマウスや試薬の購入などに充てる予定である。
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