2022 Fiscal Year Research-status Report
Role of neutrophil extracellular traps in breast cancer carcinogenesis
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22K16450
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
芝 聡美 自治医科大学, 医学部, 助教 (70721603)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖尿病合併乳癌 / 好中球細胞外トラップ / 発癌 / 腫瘍浸潤好中球 / 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)2006年1月1日から2020年8月31日までに行われた乳癌の手術症例のうち、糖尿病を合併していた症例は177例であり、メトホルミンを含む内服治療を行っていた症例は49例だった。メトホルミン内服群49例と非内服128例における臨床病理学的因子(年齢、組織型、リンパ節転移の有無、癌細胞のKi-67、Stage、Subtype、PST施行の有無)の全ての項目に有意差を認めなかった。メトホルミン内服群と非内服群のOSに有意差は認めなかった(p=0.99)が、DFSはメトホルミン内服群が良好である傾向が示唆された(p=0.24))。 (2) また、一次全身化学療法を施行した症例の治療効果をメトホルミン内服群と非内服群で比較すると治療効果Grade3であった症例は、メトホルミン内服群は9例中5例(55.6%)、非内服群は31例中5例(16.1%)であり、メトホルミン内服群は非内服群と比較して、PSTの治療効果が高い傾向を認めた(p=0.05)。 (3) 切除標本の免疫染色にてCD68(+)腫瘍浸潤マクロファージの総数は、メトホルミン内服群は非内服群と比較して有意に減少していた(123(26-280/mm2 vs 159(53 -368)/mm2, p<0.05)。このうちCD163(+) M2型マクロファージの割合はメトホルミン内服群で有意に低値だった(66.5%(49.9%-80.2%) vs 77.1%(48.6% -92.9%), p<0.001)。一方、CD3(+)腫瘍浸潤Tリンパ球の総数は2群間に有意差は認めなかったが、すべての腫瘍浸潤Tリンパ球におけるCD8陽性リンパ球の割合は、メトホルミン内服群で有意に高値であった(74.2%(61.3%-86.4%)vs 63.2%(38.1% -83.4%, p<0.01)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2006年1月1日から2020年8月31日までに自治医科大学附属病院 消化器一般移植外科で行われた糖尿病合併乳癌患者の手術症例177症例のうち、メトホルミン内服症例は49例であった。メトホルミン内服症例は非内服症例と比較して術後全生存率(OS)に有意差は認めなかったが、術後無病生存率(DFS)は良好である傾向を認めた。摘出検体を用いた多重免疫組織化学染色(Multiplex IHC)法によるがん微小環境の浸潤免疫細胞の評価は、メトホルミン内服群は非内服群と比較して乳癌組織に浸潤したM2マクロファージの割合は有意に低く、CD8陽性Tリンパ球の割合は有意に高い結果を得ることができた。この事実から、メトホルミンは免疫学的微小環境を抗腫瘍的に変化させていることをヒト乳癌組織で示すことができた。臨床的検討にてメトホルミンの内服が宿主の免疫を介して乳癌患者の予後を改善している可能性があることを示唆するデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)臨床的検討では、2019年6月~21年12月までの症例を追加検討し、より多くの症例でのメトホルミンの影響を検討する。また、乳癌177例のうち、52 人の患者がDPP-4阻害薬を含む薬で治療されていたため、 同様の方法で患者予後と免疫学的乳癌微小環境に対するDPP-4阻害薬の影響を明らかにする。 (2)糖尿病を呈するC57BL/KsJ-db/db (db/db)マウスの末梢血由来の好中球はNETsを起こしやすいことが解っているため、このマウスに発癌物質7,12-Dimethy-benzathracene (DMBA), 100mg/Kg経口投与を毎週1回、6週続けて投与して、その後の乳腺腫瘍の発生状況を50 週まで観察する。その後、犠牲死させ、乳腺を切除して組織学的に乳癌の発生状況を確認する。また、乳腺組織内に浸潤した好中球とNETsの存在を、CD66bおよびシトルリン化ヒストン3 (cit-H3) に対するモノクロナル抗体を用いて免疫染色し、その頻度を定量する。この結果から、乳腺腫瘍の発生にNETsがどう関与しているか?を明らかにする。さらに、この実験系に、NETsの分解薬DNAse1やNETs産生阻害薬PAD阻害薬,Cl-Amidineを投与し、乳癌の発生に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ヒト検体を用いた免疫染色実験の実施とその解析、特にMultiplex技術を用いた多重染色結果の正確な判定を行うステップに予想以上の時間を要した。解析の方法論は確立できたため、次年度で追加で症例を増やして検討することは十分に可能である。一方、マウスを用いた動物実験を十分に行う時間的余裕がなかったため、次年度で集中的に動物実験を行い、予定の実験を行う予定である。
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