2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K16467
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡部 安博 九州大学, 大学病院, 講師 (90444819)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 歯周炎 / 腎移植 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、腸内細菌叢の変化が移植免疫に及ぼす影響を、代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g) を用いたラットの歯周炎モデルおよび同種腎移植モデルを用いて解析することである。腸内細菌叢と免疫の関係として、特に制御性T細胞(Treg)は腸内細菌の代謝産物によりその発現が制御されていることが知られており、我々は腸内細菌叢の変化によるTreg発現の変化および腎移植拒絶反応への影響を解析している。本年度はラットの実験的歯周炎の作成、およびラット腎移植モデルの確立を行い、実際に歯周炎モデルに対する腎移植実験を施行した。 ラットの歯周炎モデル作成には様々な手法があり、当初は簡便なP.gの経口投与によるモデルを計画していた。しかしP.gの経口投与を行ったラットとプラセボを経口投与したコントロールラットで、末梢血および脾臓細胞中のTregをフローサイトメトリーで比較したところ、いずれも2群間で有意差はなかった。そこで、より臨床に近い歯周炎モデルである、上顎臼歯の結紮およびP.g投与による実験的歯周炎モデル(EP)を用いることとした。このEPラットの末梢血中のTregをフローサイトメトリーで測定したところ、未処置のコントロールラットと比較して、EPラットで有意にTregが増加していた。しかし同種腎移植を施行したところ、レシピエント生存率に2群間で有意な差はなかった。 これまでの結果は、第35回日本バイオセラピィ学会のワークショップで「ラットを用いた歯周炎と腸内細菌叢の移植免疫に対する影響の研究(Treg多寡の観点から)」として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたP.g経口投与モデルから実験的歯周炎モデルに変更したため、変更に至るまでの試行錯誤と実験的歯周炎モデルの手技確立に時間を要した。また実際に実験的歯周炎モデルラットの腸内細菌叢の解析も未施行のため、腸内細菌叢と移植免疫の関係を解析するにあたり、まだ検討項目が多い状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
EPラットの腸内細菌叢解析を行い、実際に腸内細菌叢の変化が生じていたのかを確認する。腸内細菌叢の変化が確認できるのであれば、Treg以外にもTh17やCD8陽性T細胞など、様々な免疫細胞への影響を再度解析する。 また腎移植の結果に関しても、レシピエント生存率では差がなかったが、腎グラフトの病理解析により実際の拒絶反応の程度を確認して再度評価を行う必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度は前項で説明した通り、進捗にやや遅れを生じた。特に腸内細菌叢の解析は予算の中で比較的大きな割合を占めるが、これは本年度は施行できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は腸内細菌叢解析をはじめ、本年度に予定どおり行えなかった解析を行い、次年度使用額を使用する計画である。
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