2023 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌における、腫瘍細胞由来腫瘍血管内皮細胞誘導因子の解析
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22K16530
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 謙一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (60781721)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肝癌 / 腫瘍血管 / エクソソーム / mRNA / 形質転換 / 腫瘍血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍血管内皮細胞(Tumor endothelial cell: TEC)は,癌細胞の血行性転移や増殖に重要な役割を担っていると報告されている.TECは正常血管内皮細胞(Normal endothelial cell: NEC)が,外的因子の影響により,TECへと変化すると考えられているが,そのメカニズムについては依然として不明である.肝細胞癌において腫瘍細胞由来腫瘍血管誘導因子が正常血管内皮細胞から腫瘍血管内皮細胞へ形質転化を惹起するという仮説に基づき,腫瘍血管内皮細胞誘導因子の同定,さらには新規血管新生阻害薬の開発を目指す. 2022年度の研究結果では、マウス癌細胞株BNLをNECあるいはTECと混合投与し,形成された皮下腫瘍の血管密度の経時的変化を検討した.接種後7日目の血管密度は,TEC群29.2/1視野,NEC群14.6/1視野であり,TEC群において有意に高値であった。接種後10日目においては,TEC群とNEC群との差が減少していた. 2023年度の研究結果では、in vitroの研究を実施した。癌細胞由来Condition Medium(CM)の添加によるNECの増殖能および遊走能は、それぞれ1.4倍,2.2倍に増加した。さらマウス大腸癌細胞株CT26を使用した転移性肝癌モデルにより分離培養したTECとNECを次世代シークエンスによる解析の結果、発現差を認める127遺伝子を同定した。 以上の結果より,腫瘍細胞由来の腫瘍血管誘導因子によりNECからTECへの形質転化の可能性が想定され、次世代シークエンスにて得られた解析を今後進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、肝細胞癌に加えて大腸癌細胞株を使用した転移性肝癌モデルを使用して、解析を進めた。複数の細胞株や複数のモデルを使用することにより、腫瘍血管内皮細胞の普遍性の検討が可能となった。転移性肝癌モデルによるTECとNECの次世代シークエンスによる解析を実施した。これまでの研究結果から、腫瘍細胞由来の腫瘍血管誘導因子によりNECからTECへの形質転化の可能性が示唆された。今後は個々の遺伝子に関して、機能解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍細胞由来腫瘍血管誘導因子がNECからTECへ形質転化を惹起している可能性が示唆された。また次世代シークエンス解析は完了しており、解析結果により発現差を認める127遺伝子を同定した。今後は、個々の遺伝子に関して文献的報告やGSEAなどによるシグナル解析をもとに候補遺伝子の絞り込みを行う。最終的には形質転化に関する単一あるいは少数の遺伝子の同定および治療標的の可能性について検討を行う予定である。その都度得られた研究結果により、適宜方法等の修正を行っていく方針である。
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Causes of Carryover |
2023年度は既存の物品・試薬および当科内予算で発注したマウスを使用し、また次世代シークエンサー費用の減額により交付金を温存することができた。次年度には標的遺伝子を絞り込み、in vitroの機能解析やvivo実験のためのマウス購入費が必要となるため、これに使用していく。また、2024年度においては海外学会での発表費用も見込んでいる。
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