2023 Fiscal Year Research-status Report
漢方薬を用いた再発・転移大腸がんに対する新規治療方法の開発
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22K16536
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
白石 久 高知大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (00717366)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | AMPK活性化作用 / ナノ粒子 / 漢方薬 / 大腸がん |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞ではAMP-activated protein kinase(AMPK)のリン酸化が抑制され、下流に位置するシグナルの働きが抑えられることで、細胞周期が制御されず、細胞増殖速度が速くなる。これに対して、AMPKのリン酸化を促進し、活性化させることで、細胞周期を停止させ、腫瘍増殖を抑制できる。また、AMPKを活性化させることで、既存の抗がん剤の治療効果が向上することも知られている。しかし、現在、抗腫瘍作用を目的に臨床使用可能なAMPK活性化剤は存在しない。 そこで本研究では、AMPK活性化作用を有する漢方薬及び、活性成分を同定することを目的として検討している。
令和4年度に、96種類の漢方薬の構成生薬について、有機溶媒、遠心分離等の様々な方法でエキスを抽出し、培養細胞を用いてAMPK活性化を指標としたスクリーニングを行った。その結果、ニラ(Allium tuberosumの地上部)、蒼朮(Atractylodes lanceaの根茎)、牛膝(Achyranthes bidentata の根)から遠心分離によって得られたナノ粒子においてAMPK活性化が確認された。 令和5年度は、これらのナノ粒子について2種類のヒト結腸がん由来細胞(HT-29、SW480)に対する細胞増殖抑制作用にて評価を行った。その結果、これらのナノ粒子に細胞増殖抑制作用があることが確認された。現在は、これらのナノ粒子をHT-29、SW480細胞に作用させ、フローサイトメトリー法を用いて、アポトーシス及びフェロトーシスに関連するタンパク質の発現量の評価を実施している。これにより、ナノ粒子による細胞増殖抑制の作用機序を明らかにすることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画では、令和5年度には腫瘍移植モデルマウスに対する抗腫瘍活性の評価を実施するための予備的検討を行う予定であったが、未だ実施できていないため、進捗状況はやや遅れているとした。当該実験は令和6年度に実施する予定である。 しかし、令和5年度は、前年度にAMPK活性化剤としての可能性を見いだした3種類の生薬由来ナノ粒子について、2種類の大腸癌細胞を用いて細胞増殖抑制作用に関する評価を行い、活性がみとめられることを確認できた。現在、これらの物質についてフローサイトメトリー法を用いた検討を進めており、これによりナノ粒子の作用機序を明確にできると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は前年度に実施できなかった腫瘍移植モデルマウスに対する抗腫瘍活性の評価をするための予備的検討を実施する。 さらに、AMPK活性化剤として見いだした3種類の生薬由来ナノ粒子について作用機序を明らかにするために、フローサイトメトリー法を用いた検討を進める。 また、ナノ粒子には活性成分としてmiRNA等の核酸や植物の二次代謝産物が含まれることが予想される。これらの活性成分を明らかにするために、RNAシーケンス及びLC-MSによるメタボローム解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度に、動物実験の予備的検討に着手する予定であったが、フローサイトメトリーを用いた作用機序の検討に時間を要し、実施できなかったため、物品及び動物購入費などが残金として発生した。当該実験は令和6年度に実施予定であるため、次年度使用額としたい。
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