2022 Fiscal Year Research-status Report
CFDを用いたCABGにおける中枢composite graft吻合の形態的解析
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22K16555
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
焼田 康紀 千葉大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (40790671)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 数値流体力学 / 冠動脈外科 / 心臓血管外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では2本以上のfree graftを使用する際の中枢吻合部の形態ごとの血流分布について数値流体力学を用いて解析することでグラフトに実際に流れる血流量や、血管壁や吻合部にかかるせん断応力Wall shear stress (WSS)、せん断応力のベクトルゆらぎを示すOscillatory shear index(OSI)などを測定し、最も長期開存が望める最適な中枢吻合形態を明らかにすることを目的とする。具体的には、PiggyBack吻合における第2グラフトの吻合位置、角度、血管径などを変化させて様々なモデルで血流解析を行い、血行力学変化の違いについて検討する。これまでの研究で中枢吻合の形態での開存性の報告は少なく、冠動脈の血流解析においても中枢吻合に着目したものはほとんど見られないため、独自性がある。最適化されたモデルでは中枢吻合の位置、角度などの形態による変化のみならず、冠動脈の狭窄の状態やグラフトの血管径などの情報を盛り込んでいく事によって現実に近い状況を作り出すことができる。まずは得られた結果の解釈をしやすくするため中枢吻合の形態のみにバリエーションを持たせて各形態を比較している。1本目のグラフトの中枢吻合から2本目のグラフトの吻合部までの距離が長くなるほど2本目のグラフトに流れる血流量が低下することが明らかになっており、PiggyBack吻合をする場合2本目のグラフトは1本目の中枢吻合に近い位置で1本目と逆向きに吻合すると流量が多く長期的な開存が見込める可能性が示唆されている。今後は冠動脈の狭窄度を再現することでより現実に近いグラフト血流の解析を行うことができると考えており、さまざまな条件を設定した3Dモデルを作成中である。また、実際に患者の術後造影CTから3Dモデルを作る技術も確立しており、今後は実際の患者モデルを使った血流解析を行なっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、①Pilot studyとして大動脈-冠動脈吻合の理想モデルを用いた血流解析、②大動物でバイパスモデルを作成し実際の血行動態解析と血管壁の病理学的変化の検討、③最終的に患者個別モデルでの大動脈-冠動脈血流解析を行い、バイパス閉塞リスクを解明する、といった予定であったが、まだ理想モデルでの血流解析を行っている段階である。これは3Dモデルを作成するのに時間がかかることと、作成した理想モデルを解析するのに非常に時間がかかるためである。研究開始当初の単純なモデルの解析にはこれまで解析を行ってきたPCのスペックでも十分であったが、現実に即した解析を行うためには理想モデルの形状はだんだん複雑化していく必要があり、形状が複雑になるほどメッシュ数の増加、条件の複雑化などにより解析に要する時間が長くなる。この問題を解決するために本年度は最新の血流解析用PCを新たに増設し、解析にかかる時間の短縮を図っている。理想モデルである程度の方針が定まらないと大動物への適応は難しく次のステップに進めないが、理想モデルの解析に目処が付いたらすぐに実験を行えるように動物実験の準備は並行して進めている。また、患者個別モデルでの血流解析についてもすぐに開始できるように準備をしている。具体的には、実際に当院で冠動脈バイパス術を受けた患者に対してできるだけ造影CTを行うようにしており、解析に使用できる症例数を増やしているところである。また、実際に患者の術後造影CTから3Dモデルを作る技術も確立しており、すぐに取り掛かることができる。以上より進捗状況としてはやや遅れているものの、その遅れを取り戻すための準備は整っていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
理想モデルでの研究解析については、冠動脈の完全閉塞モデル、狭窄モデル、多枝バイパスモデル以外にも口径差のあるnativeとgraftとの吻合モデル、狭窄を考慮した多枝バイパスモデルなど複雑なモデルについても解析を進めていく予定である。また、理想モデルから得られた結果を生かして大動物での冠動脈吻合モデルの作成も行い、実際のグラフトの血流測定を行なってシミュレーションとの差異を比較検討したり、実際に血流を受けた血管壁の組織学的変化などについて解析する予定である、さらに、実際のCABG患者の術後造影CTを使用してCFDモデルを作成する患者個別モデルの段階では、術中のグラフト血流測定の結果と比較したり、モデル上でのwall shear stressやoscillatory indexなどを解析し、理想的な吻合口の径、平行方向、垂直方向への角度などを追及していく予定である。さらにその先には術前患者において使用できるバイパスシミュレーションモデルへの応用を予定している。 千葉大学工学部との研究協力も行っており、定期的なカンファレンスを行なってそれぞれの得意分野を伸ばしていく方策を模索している。また、我々の研究発表から同様の研究をするグループも増えてきており、さらに議論を進めていける環境が整いつつあると感じている。今後は同様の研究を行っているグループとも共同研究も検討しながら、さらに研究の幅を広げていく予定である。 様々な冠動脈バイパスモデルでの血流動態を解析することで、実際の臨床にパラダイムシフトを起こすような研究ができると考えており、最終的には術前患者におけるバイパスシミュレーションモデルを作成していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めるにあたり、必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額とは異なっているが、遅れを取り戻す準備は進んでおり、すべての要素が揃った時点で実験に取り掛かることは可能である。
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