2023 Fiscal Year Research-status Report
肺がんの胸膜播種進展に関与するがん微小環境の病態解明
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22K16568
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
諏澤 憲 岡山大学, 大学病院, 助教 (90839713)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肺癌 / 癌微小環境 / 胸膜播種 / がん関連線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、肺がん胸膜播種巣の成立におけるがん微小環境役割に着目し、そのメカニズムを解明することで、肺がんの胸膜播種の形成において中心的役割を担う分子を明らかにし、新規治療標的を探索することを目的としている。 2023年度は、非小細胞肺がん細胞株と臨床検体由来のがん関連線維芽細胞(Cancer associated fibrobrast, CAF)を用いて、3次元共培養で得られるがん細胞・CAFスフェロイドから分離抽出した肺がん細胞と肺がん細胞単独(スフェロイド非形成)のペアサンプルを用いて、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を実施した。得られた解析結果から、がん細胞はCAFの刺激によりマトリセルラー蛋白CCN1の発現誘導されることを同定し、さらにCCN1発現上昇よるがん細胞の遊走能・接着能上昇、マウスモデルにおける肺がんの胸膜播種形成の促進を明らかにした。これらの結果より、CAFは胸腔内において、肺がん細胞のスフェロイド形成を促進し、CCN1発現誘導することにより胸膜播種形成を促進するという一連の進展機構を明らかとなり、さらにCCN1が胸膜播種に対する有効な治療標的となる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん細胞の増殖能、遊走・浸潤能、ECMに対する接着能、足場非依存性増殖能は、がん胸膜播種形成において重要な能力とされるが、in vitroモデルを用いてCAFがこれらを促進することを明らかにした。さらにマウス胸膜播種モデルを用いて、CAFをがん細胞と一緒に胸腔内移植することにより胸膜播種進展が促されることを確認した。次に、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を実施し、がん細胞はCAFの刺激によりマトリセルラー蛋白CCN1の発現誘導されることを同定した。そしてCCN1発現誘導によるがん細胞の遊走能・接着能上昇、マウスモデルにおける肺がんの胸膜播種形成の促進を明らかにした。以上よりCAFは胸腔内において、肺がん細胞のスフェロイド形成を促進し、CCN1発現誘導することにより胸膜播種形成を促進することを示した。研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度に実施したがん・CAFユニットサンプルから得られたRNA-seq網羅的遺伝子発現解析を継続し、がん・CAFユニット中の肺がん細胞において活性化している遺伝子セットおよびシグネチャーを明らかにする。さらに、臨床検体を用いて、悪性胸水中に存在するがん細胞・CAFユニットの探索を免疫染色を用いて行い、臨床検体での現象確認、形態学的特徴の検討を行う。
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Causes of Carryover |
物品購入において、一部当初の見込みよりも少額で購入出来たものがあったため、余剰が生じた。次年度に繰り越して解析費用および物品購入に充当する予定である。
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