2023 Fiscal Year Research-status Report
非小細胞肺癌PDXモデルを用いた治療後微小残存病変の生存メカニズムの解明
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22K16576
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
三窪 将史 北里大学, 医学部, 准教授 (90723940)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非小細胞肺癌 / 微小残存病変 / 腫瘍間不均一性 / 治療抵抗性 / PDX |
Outline of Annual Research Achievements |
非小細胞肺癌における術後補助化学療法後および切除不能肺癌に対する全身療法後の再発には,治療に抵抗して生存する微小残存病変(minimal residual disease: MRD)が関連している.MRDは腫瘍細胞が治療抵抗性を確立する前段階の細胞集団であり,薬剤耐性の獲得を抑制するにはMRDの制御が必要である.しかし,MRDの生物学的特性や制御メカニズムは不明な点が多い. これまでの肺癌薬物療法における研究は再発腫瘍の薬剤耐性メカニズムや再発後の治療に焦点が置かれており,MRDのような再発巣発生の基となるメカニズムやその予防について着目した研究は少ない.MRDの研究では対象となるMRDが微小病変で通常は生検困難な場合が多いため,取り扱いの簡便な細胞株が用いられてきたが,既存の細胞株は継代を重ねることで形質が変化している可能性がある.また,癌細胞の治療抵抗性には腫瘍周囲の微小環境が影響することが報告されているが,これまでのMRDに関する研究で用いられている細胞株モデルでは腫瘍周囲間質成分を欠くため,MRDにおける微小環境の役割について検討はされていない.そのため,患者由来の組織を用いたin vivoモデルの確立が望まれる. 本研究では患者組織由来のマウスモデルを用いた遺伝子発現解析を通じて,MRDの腫瘍間不均一性や治療薬剤による違いについて検討し,その制御メカニズムを明らかにする.本年度は患者組織由来のマウスモデルの作製を実施した.しかし,ほとんどの症例において継代するのに適したサイズまで腫瘍が増大しなかった.また,移植後にマウスの皮下で腫瘍が消失してしまった症例や,マウスの皮下から腫瘍を採取して病理組織を確認したところ,腫瘍成分が消失してしまった症例もあった.次年度は本年度に引き続き,患者組織由来マウスモデルの樹立を継続する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では非小細胞肺癌患者から外科的切除された検体の一部を採取し,免疫不全マウスの皮下へ移植して患者組織由来マウスモデル(PDXモデル)を樹立する.当該年度に6例の肺癌患者由来の組織を移植したが,ほとんどの症例において新たなマウスへ継代するのに適したサイズまで腫瘍が増大していない.また,移植後にマウスの皮下で腫瘍が消失してしまった症例や,マウスの皮下から腫瘍を採取して病理組織を確認したところ,腫瘍成分が消失してしまった症例もあった.そのため研究が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き非小細胞肺癌患者から外科的切除した腫瘍検体の一部を採取して免疫不全マウスに移植し,PDXモデルの作製を試みる.3継代以上継続した増殖が得られる腫瘍組織を安定したPDXモデルとして研究に用いる.樹立したPDXモデルの組織型,遺伝子表現型に対応する薬剤を用いて薬剤感受性スクリーニングを行う.原発性肺癌患者に対する治療では,通常ひとつの組織型,遺伝子表現型に対して複数の選択可能な薬剤が存在するため,これらの薬剤から各腫瘍モデルに対して複数(3-4種類)の薬剤を選択して薬剤スクリーニングを行う.薬剤投与後の腫瘍径の変化を継続してモニタリングし,投与薬剤に対して腫瘍縮小効果を認め,継続した薬剤投与下において安定して縮小効果が得られているものを確立した微小残存病変(MRD)モデルとし,本研究の解析対象として使用する. 治療前腫瘍と治療後MRDを用いて遺伝子発現解析を行いMRDの生物学的特徴を解明する.さらに腫瘍間不均一性および治療特異性についての解析と遺伝子発現解析によって同定された抑制因子のMRD生存における役割を検証する.
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Causes of Carryover |
本研究では,患者組織由来マウスモデル(PDXモデル)を樹立するために,非小細胞肺癌患者から外科的切除された検体の一部を採取し,免疫不全マウスの皮下へ移植する.本年度に移植を実施した症例において,予想外に腫瘍の増大が緩やかであったことから,マウス間での継代が実施出来なかった.また,移植した 1代目のマウスで,既に腫瘍が消失してしまった症例や継代の際に腫瘍の一部を採取して病理標本にしたところ,実際はすでにヒト由来の腫瘍が消失していた症例もあった.そのため,本年度は皮下移植に必要なマウスの購入や腫瘍径の推移を入力するためのPC,病理標本を観察するための設備,飼育費などに支出した.次年度使用額は引き続き行うPDXモデルの樹立と,樹立完了後の薬剤スクリーニングや遺伝子解析に使用する.
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