2022 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染症後遺症による神経炎症の分子機構の解明
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22K16588
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
神 久予 千葉大学, 大学院医学研究院, 技術職員 (10938187)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | SARS-CoV-2 / spike protein |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID19の後遺症が慢性疲労症候群/筋痛症性脳脊髄炎と呼ばれる症状に似ていることから、ウイルス感染後の慢性疲労症候群あるいは線維筋痛症の病態モデルとなることに着目した。本研究ではヒト線維芽細胞種SH-SY5Y細胞とヒトミグログリア細胞株HMC3細胞にSARS-CoV-2の主たる構成蛋白質であるspike proteinを遺伝子導入して発現させ、細胞障害を評価することを目的とした。SARS-CoV-2 Spike Gene plasmidをSino Biological社から入手し、plasmid prepにてplasmidを精製した。精製したplasmidをリポフェクチン (Promega, FuGENE HD) でトランスフェクションを行った。まずは神経系の細胞よりも、より発現しやすいHeLa細胞でトランスフェクションを試みた。トランスフェクション後24時間後と48時間後に細胞を回収して、spike protein抗体によるウエスタンブロットを行ったところspike proteinのバンドが検出され、トランスフェクションが成功したことが確認できた。またトランスフェクション後24時間後と48時間後のspike protein量を比較したところ、48時間後は24時間後の40倍濃いバンドが検出されたことから、HeLa細胞内でspike proteinが増殖されたことが確認できた。次回はSH-SY5Y細胞やHMCなどの神経細胞にトランスエクションして、神経細胞でもトランスフェクションができるのか、またspike proteinの増殖が観察されるのかを検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞とヒトミクログリア細胞株HMC3細胞にSARS-CoV-2の主たる構成タンパク質であるspike proteinを遺伝子導入して発現させ、COVID-19の急性期、後遺症において感染細胞でのウイルスタンパク質の翻訳自体がUPRを介して、炎症、細胞障害、細胞死を起こす可能性を検討するとしていた。遺伝子導入によりspike proteinを発現したHeLa細胞のウエスタンブロットによる解析の結果は、小胞体ストレスの転写因子ATF6 の発現増加、や小胞体分子シャペロンBiP/GRP78 の発現の増加、また小胞体ストレスによって細胞障害が起こると細胞死を誘導する転写因子CHOP の発現やcaspase 3 の活性化が、令和4年度の研究では観察することができなかった。spike proteinと小胞体ストレスとの関連については更なる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
spike proteinの遺伝子導入については非神経細胞であるHeLa 細胞のみでしか行なっていないため、神経細胞にも遺伝子導入して、spike proteinの発現の確認と経時的な量の変化を観察する。UPR関連転写因子XBP-1, ATF6小胞体分子シャペロンBiP/GRP78 の発現や、小胞体ストレスによって細胞障害が起こると細胞死を誘導する転写因子CHOP の発現やcaspase 3 の活性化を蛍光免疫染色、ウエスタンブロットによって観察する。遺伝子導入に際して、小胞体機能を補助するpharmacological chaperone として、tauroursodeoxycholic acidと4-phenylbutyric acid を事前投与する群を設け、同様の解析を行い細胞保護効果を検討する。RNAを調整し、次世代シークエンサーによるRNA-sequencingにより網羅的に遺伝子発現を解析する。疲労感にはTGF-β、interferon, IL-6, TNF alphaなどのサイトカインが関与していると推測されており、こうしたサイトカインの発現と、その発現誘導を調節するXBP-1、JNKなどの細胞内情報伝達分子の遺伝子発現変化に特に着目する。中心的な細胞内情報伝達分子を同定出来れば、siRNAを用いてその遺伝子発現を抑制し、下流のサイトカインの発現誘導が減少するかどうかをreal time PCRによってモニターする。
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Causes of Carryover |
spike proteinの精製と遺伝子導入の条件設定に時間がかかっため、予定より進捗が遅れてしまった。また小胞体ストレスとの関連も検討中のため、初年度に予定していた設備備品の導入に遅延が生じている。本年度はウエスタンブロットに加えて、免疫蛍光染色による解析を進める。より精密に各種分子の細胞内局在を解析するためにApoTome 2システムを購入して3次元画像を構築する。RNAの解析についてはRNA-sequencingは外部研究機関に外注委託する。
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