2022 Fiscal Year Research-status Report
脊髄後角ニューロンにおけるレミマゾラムの鎮痛効果およびその作用機序の解明
Project/Area Number |
22K16610
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
出口 浩之 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (30804562)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レミマゾラム / 脊髄後角 / パッチクランプ記録 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、超短時間作用型の静脈鎮静薬としてレミマゾラムの製造販売が新規承認され、世界に先駆けて初めて臨床での使用が開始された。その作用機序は脳内のGABAA受容体に作用するためと考えられている。一方、このGABAA受容体は脳だけでなく痛覚伝導路である脊髄後角に多く発現していることが知られているため、レミマゾラムには鎮静作用の他に鎮痛効果を発揮する可能性が推測されるが、これまでレミマゾラムの鎮痛効果について着目した研究はない。 本年度、本研究では行動学実験により、炎症性疼痛モデルラット(CFAを用いた)に対しレミマゾラムの脊髄くも膜下投与を行ったところ疼痛閾値を上昇させることを確認した。 また、脊髄第Ⅱ層におけるレミマゾラムの反応を電気生理学実験により解析した。電気生理学実験は脊髄スライス標本のⅡ層からin vitroパッチクランプ記録を用い、微小興奮性シナプス後電流 (mEPSCs)と微小抑制性シナプス後電流 (mIPSCs)、GABA・Glycine誘発電流を記録し、レミマゾラム (10 μM)に対する反応を検討した。その結果、mEPSCsは レミマゾラムの投与を行っても変化を認めなかった。一方、mIPSCsはレミマゾラムの投与により、頻度・振幅に変化を認めなかったものの減衰時間の延長を認めた。またGABA・Glycine誘発電流ではGABA誘発電流のみ面積・振幅ともに増強された。 以上の結果より、GABA受容体を介し、抑制性の作用を増強することでレミマゾラムは脊髄において鎮痛作用を示す可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レミマゾラムの脊髄くも膜下投与によりGABA受容体を介し、抑制性の作用を増強することでレミマゾラムは脊髄において鎮痛作用を示す可能性が示唆された。一方で一次求心性線維における反応について検討しているが、電気生理学実験に使用する神経根付脊髄スライスの製作技術の習得に難渋し、やや実験に時間がかかった。 また免疫組織学実験実験についても、神経根付脊髄標本を作製する方法に変更したため総合的にやや進行状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は脊髄後角においてレミマゾラムがどのように作用し、その作用機序について電気生理学実験・行動学実験・免疫組織学実験で多角的に検討している。 さらなるレミマゾラムの作用機序について検討するため神経根付スライスを用いた免疫組織学実験と、神経根への刺激に対するレミマゾラムの影響を電気生理学実験で確認する予定である。
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Causes of Carryover |
研究状況の遅れ、新型コロナウイルスの影響により、国際学会への参加を見送ったため未使用額が発生した。 本研究の目的はレミマゾラムの脊髄後角への作用とその機序を解明することであるが、次年度の計画書に即していく。
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