2022 Fiscal Year Research-status Report
TRPチャネルに及ぼす麻酔薬の作用機序に迫ることから、新たな脳浮腫治療法を探る
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22K16619
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
高橋 奈々惠 東京医科大学, 医学部, 助教 (00630550)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | TRPチャネル / 脳保護 / カルシウムイメージング / 麻酔薬作用機序 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】全身麻酔薬使用後に見られる多様な障害が、ニューロンのエネルギー産生低下の結果であることが示唆されている。本研究はこのような障害を予防する可能性を求めて、自己酸化還元能をもつことが証明されている5-デアザフラビン誘導体(10-エチル-3-メチルピリミド[4,5-b]キノリン-2,4(3H,10H)-ジオン;TND1128)がミトコンドリアにおける電子伝達系介入して、エネルギー産生を高める可能性を明らかにすることを目的とした。そのため以下に述べるようにマウス脳スライスに脱分極刺激を与え、ニューロンの細胞内Ca2+濃度を上昇させ、それに対する保護作用を検討した。対照薬物として、同様な自己酸化還元能をもつβ-ニコチンアミドモノヌクレオチド(β-NMN)を用いた。【方法】24±2時間前にTND1128またはβ-NMNを皮下投与したマウスの脳スライス標本を作製し、等張80K-ACSFで負荷をかけた。(95%O2および5%CO2酸素化)(温度32±1℃)。細胞質およびミトコンドリアにおける重篤な脱分極誘発Ca2+過負荷からの薬物の保護効果を調べた。Control群と各濃度投与群の反応を解析した【結果】TND1128は80K負荷による 細胞質とミトコンドリアの[Ca2+]上昇を用量依存的に減少させた。活性対照として用いたβMMNでも部分的な有効性が認められた。【考察】ニューロンは細胞膜上に高密度の電位依存性Ca2+チャネル(VOCC)を発現するので、本研究で見られたCa2+動態を示す主な細胞はニューロンと考えられる。今回得られた結果は、外因的投与された酸化還元活性を有する分子が、細胞質における嫌気性ATP産生およびミトコンドリアにおける好気性ATP合成に直接介入できることを示している。これは、TND1128を用いることで多周術期における種多様な脳障害を回避する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ期での日常業務の負担が大きくなり、研究遂行に十分な時間を確保することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
TND1128が麻酔薬の作用やTransient receptor potential channel、各種細胞に及ぼす影響について調べてゆきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ時期であり、物品搬入が滞っていたため、実験計画の順番の変更を行った。次年度は、TRPV4ブロッカーとミトコンドリア活性との関係、また、麻酔薬の作用にミトコンドリア活性薬がどのように作用するか、探ってゆきたい。
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