2022 Fiscal Year Research-status Report
心停止蘇生後病態における自然免疫調整機構の解明と新規免疫調整療法の開発
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22K16632
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多村 知剛 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (00571720)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心停止蘇生 / 脳障害 / NKT細胞 / 免疫調整療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
心停止蘇生は全身の虚血再灌流傷害を起こす。虚血再灌流傷害は非感染性の全身性炎症反応を惹起し、その炎症の制御には免疫機構が深く関与することが知られている。単一臓器の虚血灌流障害モデルにおいては、自然免疫細胞のナチュラルキラーT(NKT)細胞が重要な役割を果たすことが報告されているが、NKT細胞が心停止蘇生後の病態に担う役割は明らかでない。本研究の目的は、心停止蘇生後の脳機能障害にNKT細胞が関与しているか、またそのメカニズムについてマウス心停止モデルを用いて明らかにすること、さらには院 外心停止蘇生後患者で臨床的相関を確認し、新規免疫調整療法の開発を目指すことである。心停止蘇生6時間後にはマウス血漿中のNKT細胞の抗原であるスルファチド脂質が上昇すること、心停止24時間後にはスルファチド反応性NKT細胞が脳に浸潤することが明らかとなった。心停止蘇生後にスルファチドを静注することでも生存率と脳機能スコアが改善することがあきらかとなったが、心停止18時間前にスルファチドを腹腔内投与する方法の方が効果が高いことが明らかとなった。この心停止前投与を用いて、心停止24時間後の脾臓中のNKT細胞の表現型をフローサイトメトリーを用いて検討した。結果、スルファチド反応性NKT細胞の活性化マーカーであるCD69と転写因子PLZFの発現が上昇していた。さらにケモカイン受容体の発現も上昇していたが細胞傷害活性の指標であるパーフォリン、グランザイムには変化を認めなかった。また、スルファチドの投与はNK細胞数に影響を与えないが、NK細胞中のインターフェロンγの発現は減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験は概ね順調に解析が進行している。一方で、患者の組入れはバイオバンキング事業とのすり合わせを要するため、倫理申請に時間を要している。夏季から冬季にかけてのCOVID-19の流行も相まって、バイオバンキング事業の進捗の遅れがなくても、組入れに支障を来した可能性が高く、現状では概ね予定通りの進捗と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から、NKT細胞が心停止蘇生後初期の炎症を制御する機序がcytotoxicityである可能性は低い。残る仮説は、スルファチドで活性化されたNKT細胞がIL-10を産生し、IFNg産生細胞を抑制することである。次年度は心停止蘇生後のNKT細胞の産生するサイトカインを評価する。次いで、スルファチドの投与によってインターフェロンγ産生が抑制される細胞種をフローサイトメトリーで特定する。さらにNKT細胞が産生するサイトカインをモノクローナル抗体を用いてブロックすることでスルファチドの保護効果がキャンセルされ、インターフェロンγ産生が増加することを確認する。また、バイオバンキング事業とその整合性を取り、心停止蘇生後患者のバイオバンキングを開始を目指す。
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Causes of Carryover |
効率良い動物実験の実施と、新型コロナ感染症の蔓延によって予定していた学術集会の現地参加を中止したことによって残金が生じた。またヒト検体のバイオバンキングの開始が遅れたことにより、必要な資材の購入が先送りとなったため当初の初年度の計画より支出が減少した。次年度は前年度に使用しなかった資材の購入を行う。
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