2022 Fiscal Year Research-status Report
新規敗血症モデルと免疫学的先端技術を用いた敗血症免疫反応の解明
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22K16635
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土田 拓見 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (50838654)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 敗血症 / モデルマウス / サイトカイン / PICS / 凝固線溶障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が開発した個体差の少ない優れた新規敗血症モデル(FSIモデル)の作成プロトコールは、2022年に論文掲載された(Frontiers in Medicine 2022)。このFSIモデルの妥当性を証明のために得られた結果は、すでに敗血症免疫研究の領域において注目されている(Proc Natl Acad Sci USA. 2023)。申請者はFSIモデルより得られた検体を免疫学的先端技術であるCyTOFとLUMINEXにより解析中である。さらには敗血症免疫反応だけでなく、凝固線溶障害や、亜急性期以降に生じる免疫機能不全あるいは免疫応答に伴う炎症反応の長期化、タンパク異化亢進と栄養障害など複数の病態が関与する症候群(PICS)に関してもデータを収集が完了した。凝固線溶障害については、既存のヒト検体を用いて敗血症におけるアンチトロンビン活性値、および補充療法の開始根拠についての研究結果を昨年度内に報告した(Thrombosis Journal 2022)。PICSにおける免疫応答については、敗血症罹患後マウスにおける慢性炎症状態が病理組織学的に明らかとなり、LUMINEXによる解析では、PICSマウスが免疫抑制状態に陥っている可能性が示唆された。これらのPICS病態における結果については現在論文作成中であり、年度内の学術雑誌掲載を目指している状況である。また、敗血症研究の可能性を広げるために、申請者は検体をより多く採取可能なラットFSIモデルの作成プロトコールを確立させており、ラットFSIモデルを用いた敗血症基礎研究の結果も報告していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請内容の中心となる、申請者が作成した新規敗血症モデルマウス(FSIモデル)の作成プロトコールは、本研究課題の申請後に正式に論文掲載され、その結果は敗血症免疫研究の領域において早くも注目されている。申請者も敗血症モデルを用いて、①敗血症に対する新規薬剤の有効性の検証、②凝固線溶障害の機序解明に向けた分子マーカー測定、③亜急性期以降に生じる免疫機能不全あるいは免疫応答に伴う炎症反応の長期化、タンパク異化亢進と栄養障害など複数の病態が関与する症候群(PICS)モデルマウス作成およびその免疫学的解析を行っており、いずれも新知見に結び付くことが予想されるデータが集まりつつある状態である。今後はこれらのデータを整理、解析して学会発表および学術雑誌への掲載を目指す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の軸としては、①CyTOFとLUMINEXによる敗血症およびPICS病態における免疫反応の解析、②敗血症における凝固線溶障害の機序解明および治療薬候補の探索、が挙げられる。敗血症研究を進めるにあたっては、検体量を多く採取できるラットの使用も必要である可能性があり、ラットFSIモデルの作成についても推し進める必要がある。今後はこれらの研究を推進していった結果得られた新知見を順次学会発表および論文掲載していく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックの影響で、本申請の交付は2022年10月となりました。したがって、2022年度内では本申請の交付金を用いた研究を十分に行うことができず、予定を大きく下回る出額となりました。2023年度は、申請時の予定通り研究を進め、本申請の交付金を用いて成果を発表できる予定である。
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