2023 Fiscal Year Research-status Report
表面筋電図を用いた呼吸補助筋の活動分析は人工呼吸器離脱の予測指標となりうるのか?
Project/Area Number |
22K16642
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
関口 浩至 琉球大学, 医学部, 准教授 (30842215)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 努力呼吸の定量化 / 筋生理学 / 呼吸生理学 / 人工呼吸器からのウィニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1. 臨床で人工呼吸器からの離脱(以下ウィニング)を試みている患者の呼吸補助筋活動を表面筋電図のRMS解析を用いて定量的に評価すること、2. ウィニング中に出現した頻呼吸に伴う努力性呼吸に対して表面筋電図のRMS値が急激に増加するポイント(EMG-AT)を捉えること、3. ウィニングの成否を予測する指標として汎用されている速浅呼吸指数と呼吸補助筋のEMG-ATとの相関関係を検証すること、4. ウィニングの成否を予測する呼吸補助筋として胸鎖乳突筋と僧帽筋の活動を比較検討することである。 令和5年度の研究実績としては、上記目的1に対して、実際に臨床で人工呼吸器からウィニング中の患者18症例からデータ取得を試み、15症例から呼吸補助筋活動を表面筋電図を用いてデータ取得に成功した。また、目的4に対しては現在までに3症例から胸鎖乳突筋と僧帽筋のデータ取得に成功している。 目的2と3に関しては、データ収集と同時並行で、取得したデータ分析を進めている。胸鎖乳突筋と僧帽筋のRMS値のEMG-ATの同定には、グラフ化した後に、RMS値が急激に増加するポイントが存在するかを視覚的に検討するが、必要時、区間線形関数を用いて同定をすすめる。また、胸鎖乳突筋と僧帽筋のRMS値の推移が速浅呼吸指数をはじめとするどのパラメータと連動(類似)するのか、相互相関分析を用いて一致系列や先行系列の分析をすすめている。さらに相互相関分析で胸鎖乳突筋と僧帽筋のRMS値と連動性(類似性)があると判断されたパラメータは、Transfer Entropy(移動エントロピー)分析を用いて、胸鎖乳突筋や僧帽筋のRMS値への因果関係についても分析をすすめて行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年4月25日に琉球大学の人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得た。残念ながら琉球大学病院救急部HCUでのデータ取得は救急部HCUの人工呼吸器離脱プロトコルと本研究の手順に相違があることから今回データ取得が困難となった。もう一カ所のデータ取得対象施設である友愛医療センターICUでのデータ取得をすすめるため琉球大学の承認書に基づき、令和5年6月に友愛医療センターにおける臨床研究倫理審査委員会承認を取得することができた。その後、友愛医療センターICU医師やスタッフへの説明を経て、7月11日に第一症例のデータ測定が実現した。研究計画では施設あたり一カ月に2症例のデータ測定を計画し、令和5年7月~令和6年4月の間で計画通り18症例の患者のデータ測定を実施できた。琉球大学病院救急部HCUでのデータ取得は実現しなかったが、友愛医療センターでのデータ取得が予定通り達成できているため研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年5月以降、友愛医療センターICUにて一カ月に2症例ずつ測定を積み重ね、令和6年10月頃までには全測定データ25症例以上、胸鎖乳突筋と僧帽筋の両方の測定に成功したデータを10症例以上を目標に研究をすすめる計画である。また、測定と同時進行で胸鎖乳突筋と僧帽筋のRMS値のEMG-ATの同定ならびに相互相関分析を用いた一致系列や先行系列の分析、さらには相互相関分析で連動性(類似性)があると判断されたパラメータに関してはTransfer Entropy(移動エントロピー)分析を用いて胸鎖乳突筋と僧帽筋のRMS値への影響を、その因果関係も含めて分析をすすめる。令和5年10月以降はデータをまとめ関連学会での報告や論文による公表も目指す。
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Causes of Carryover |
データ測定のための施設が当初計画の2施設から1施設に減少したため、表面筋電図測定に必要な消耗品である電極装着用両面テープ・インピーダンスを減らすためのジェル剤、測定部位の皮膚の研磨に用いる酒精綿と研磨剤の使用量が計画より少なくなったためである。令和6年度の測定を遂行するために上記の消耗品の購入を継続して行う計画である。
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