2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K16681
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山田 哲也 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60816114)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膠芽腫 / メマンチン / 新規薬物療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
膠芽腫(GBM)は、本邦の原発性脳腫瘍の約11%を占め、最も急速に進行する悪性腫瘍の1つである。外科的切除、放射線治療およびテモゾロミド(TMZ)による化学療法が標準治療であるが、未だ膠芽腫患者の予後は不良であり、5年生存率は10%程度である。標準治療の中心を担うTMZに関しても、DNA修復酵素であるMGMTによる薬剤耐性が問題となっており、MGMT陽性膠芽腫に対する有効性の高い新規薬物療法の開発が急務である。 アルキル化剤であるTMZは、GBM患者の予後に大きく関わり、TMZ の有効性を最大化することが GBM治療においては重要である。グルタミン酸シグナル伝達が、グルタミン酸受容体を介して GBM の進行を促進することは、多くの報告で示されているが、TMZ耐性におけるNMDARの役割は不明である。そこで、NMDARシグナル伝達とTMZ 耐性の関連性を評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MGMT陽性のヒトGBM細胞株であるT98G細胞において、定量的リアルタイムPCR法とウェスタンブロッティング法を使用して、TMZに対する化学療法耐性を誘導するDNA修復酵素であるMGMTとNMDARシグナル伝達の関連性を検討した 。さらに、NMDAR阻害薬であるメマンチン(MEM)を使用して、TMZおよびMEMの併用効果とそのメカニズムを評価した。 N-メチル-D-アスパラギン酸によるNMDARの活性化により、T98G細胞における MGMT 発現が上昇し、TMZ の効果が抑制された。また、NMDAR1をshRNAでノックダウンすると、T98G細胞におけるMGMT発現は抑制され、TMZの効果が増強された。TMZ の細胞傷害作用は、T98G 細胞においてMEMによって増強された。さらにMEMによるNMDARの阻害により、MGMT発現は抑制され、TMZによるDNAアルキル化が増加した。ここから、MEMはTMZ誘導性のMGMTアップレギュレーションを阻害し、MGMT陽性細胞に対するTMZの細胞傷害効果を増加させた。TMZとMEMの組み合わせが MGMT陽性GBM の新しい治療戦略となる可能性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの検討により、NMDA受容体拮抗薬メマンチン(MEM)がTMZ誘導性のMGMTアップレギュレーションを阻害し、MGMT陽性細胞に対するTMZの細胞傷害効果を増加させることが明らかとなった。 さらに、われわれはMEMがMGMT陽性膠芽腫細胞のオートファジーを促進することを確認している。オートファジーは、細胞内の不要なタンパクを除去する機序の1つであり、腫瘍細胞の薬剤耐性の原因となる経路としてこれまで捉えられてきた。一方でTMZ耐性の原因となるMGMTもまたタンパクであり、オートファジーが膠芽腫細胞のMGMTタンパクを除去することでTMZ耐性を解除する可能性があると、当研究室では推定している。「オートファジーによるMGMTタンパクの除去」という新たなアプローチで、MGMT陽性膠芽腫の薬剤耐性を克服する治療戦略の可能性を検討しようと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じているが、試薬、器具など消耗品の購入代であり、ほぼ予定通りであったと考えている。次年度も必要な消耗品及び学会・論文発表費用に使用する予定である。
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