2022 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経原発悪性リンパ腫の患者由来モデルを用いた腫瘍微小環境と標的因子の探索
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22K16693
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
三宅 勇平 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80837302)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中枢神経原発悪性リンパ腫 / 患者由来細胞株 / NF-kB / 微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経原発悪性リンパ腫(Primary central nervous system lymphoma, PCNSL)は、中枢神経系(脳・脊髄・網膜)に限局した悪性リンパ腫である。これまでの研究からNF-kB経路が腫瘍の発生、増殖に重要であることが報告されているが、その詳細な機序は未だ解明されていない。申請者らは、現在までに世界最多のPCNSL脳腫瘍モデルの樹立に成功しており、中枢神経内への浸潤を経時的に観察することに成功している(Tateishi, Miyake, et al. Cancer Res. 2020)。本研究は、これらのモデルを駆使して、PCNSLの発生機序について分子生物学的機序の解明を図るとともに、腫瘍形成制御につながる創薬化を目指すものである。 当院でCNSLと診断した41例に対し、患者由来細胞株を樹立を行った。この中で31例に全エキソン解析を行った。結果、遺伝子解析において、NF-kB経路関連遺伝子であるMYD88変異は64%、CD79B変異は52%(うち81%がMYD88との共変異)に認められた。変異がない例では、NFKBIZ変異などNF-κB関連遺伝子異常を全例に認めた。しかし、NF-kB経過に対する抑制薬と遺伝子背景には関連が見いだせず、NF-kB経路は非常に複雑な制御がされていることが示唆された。これは遺伝子異常背景のみならず、腫瘍内微小環境や薬剤到達度の違いなどが関与している可能性があると考えている。マウスモデルによるNF-kB阻害薬の耐性機序解明、更には分子生物学的背景に基づく治療標的の同定など、現状の治療限界の克服を見据えた研究を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹立した患者細胞株の遺伝子解析はほぼ完了しており、遺伝子解析データを用いた種々の形跡を行っている。ただし、標的シグナルに対する阻害薬の効果には、in vitroとin vivo/患者間で差があり、これは腫瘍微小環境が関連していると考えている。またin vitroでの増殖能はin vivoと比較し低く、これも同様に微小環境の関連が示唆される。これらを解明するために、マウスモデルなどできるだけ腫瘍環境を含めた解析が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立した患者由来細胞株の遺伝子解析結果をベースに、vivoにおいても同様に遺伝子解析、発現解析をすすめ、Keyとなるシグナルを同定する。腫瘍微小環境が腫瘍増殖に大きく関わると考えており、その標的が同定できればvitroへの添加による腫瘍増殖能やや薬剤反応性の変化を検証する。標的の腫瘍への影響を明確にするために、強制発現や抑制試験を行う。
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Causes of Carryover |
研究進行は概ね計画通りとなったが、多少の余剰が生じた。細胞株の大規模な遺伝子解析の結果、候補となるシグナルが挙がってきているため、次年度はその役割を明確にするための細胞実験、動物実験を予定している。具体的には、細胞実験のための各種培地、抗体、試薬、ShRNAなど及び動物実験のためのSCID/Beigeマウスの購入を予定している。
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