2023 Fiscal Year Research-status Report
インプラント表面処理と骨形成薬による骨粗鬆症椎体における骨結合促進効果の検討
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22K16715
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 孝彬 京都大学, 医学研究科, 助教 (50835395)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨粗鬆 / ストロンチウム / テリパラチド / チタン / 表面処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、チタンインプラントのSr(ストロンチウム)表面化学処理とテリパラチド(PTH1-34)の骨形成促進作用を組み合わせることにより 、脆弱な骨粗鬆症椎体において骨とインプラントの強固な結合が可能になるかを検討することである。 R5年度の成果として、第一に、脊椎固定術モデルの前段階として骨粗鬆症ウサギ大腿骨遠位部に単純な形状(6×15mmの円柱状の緻密体)のチタンインプラントを埋入し、PTH1-34による効果を評価した。片側の大腿骨にSr表面処理を施したインプラントを埋入し、対側の脛骨に表面処理なしのインプラントを埋入した。埋入後PTH1-34の間欠的投与を6週間行った(過去の論文から新生骨が結合し始める時期)。コントロール群は生理食塩水の皮下注射を行った。6週後のμCTで両群の骨形態を検討した結果、Sr処理+テリパラチド群でインプラント周囲の有意な骨密度の増加を認めた。また、埋入6週後に採取した大腿骨遠位部の検体から樹脂包埋法による硬組織検体を作成し、組織学的評価を行った結果、μCTの結果と同様にSr処理+テリパラチド群でインプラント周囲の有意な新生骨量の増加を認めた。これらの結果は長期埋入群(12週)でも同様であった。 第二に、表面処理を施したインプラント上での前骨芽細胞の反応の評価を行った。現時点でSr処理+テリパラチド群において、いくつかの骨形成マーカーが上昇している傾向がみられており、in vivoの結果と矛盾しないデータである。 以上の研究結果から、研究立案時の仮説に矛盾しないデータが得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨粗鬆ウサギの大腿骨に円柱状のインプラントを埋入し、テリパラチド投与後の骨形態の変化を評価した。6週後のμCTによる評価にて、Sr処理+テリパラチド群でインプラント周囲の有意な骨密度の増加を認めた。研究計画段階では、円柱インプラントの次のステップとして、脊椎スペーサーインプラントを用いた実験で長期埋入結果を評価することを計画していたが、動物(ウサギ)の価格高騰による予算の圧迫のため、大腿骨顆部円柱状インプラントモデルで長期埋入結果(12週)を評価することに変更した。まず、プッシュアウトテストでインプラントと骨の界面の結合力を測定することにより力学的強度を比較した結果、Sr処理+テリパラチド群で有意に高い骨結合力が認められた(6週)。これらの結果は長期埋入群(12週)でも同様であった。また、埋入6週後に採取した大腿骨遠位部の検体から樹脂包埋法による硬組織検体を作成し、組織学的評価を行った結果、μCTの結果と同様にSr処理+テリパラチド群でインプラント周囲の有意な新生骨量の増加を認めた。これらの結果に関しても、長期埋入群(12週)で同様の結果が得られた。 インプラント上での前骨芽細胞のPTH1-34環境下での挙動を評価した。MC3T3-E1(株化骨芽細胞様細胞)を表面処理したインプラント上でPTH1-34環境下で数日間培養し、細胞毒性をXTTアッセイにて評価した。いずれの群でも細胞毒性はみられなかった。リアルタイムPCRでSr処理+テリパラチド群において、いくつかの骨形成マーカーの発現が有意に高く認められた。 当初の予定で、骨粗鬆症モデルの確立、インプラント作製と動物埋入実験の完了およびインプラント上でのin vitro評価の継続、を2年目で計画していた。上記の研究成果が得られていることから、当初の計画に遅れなく進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内でのPTH1-34の表面化学処理インプラントへの影響のメカニズムの解明のため、インプラント上での前骨芽細胞のPTH1-34環境下での挙動の評価を継続する。すなわち、MC3T3-E1(株化骨芽細胞様細胞)を表面処理したインプラント上で過去の報告に準じたPTH1-34環境下(10-12M PTH1-34 6時間毎に投与 )で数日間培養し、細胞のインプラントへの接着性、細胞毒性、骨芽細胞への分化能・増殖能を電子顕微鏡、各種アッセイ及びリアルタイムPCRでの評価を継続する。 すでに得られた動物実験の結果と、上記の細胞実験の結果をあわせてデータをまとめ、国際英文誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験に使用するウサギの価格高騰により、動物購入費が予定より増加している。R6年度の論文投稿後に追加実験を行うために使用するであろうウサギ購入費に備えて、183,782円を繰り越した。
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