2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K16725
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐野 有隆 日本大学, 医学部, 専修医 (30910129)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 脂質メディエーター / 12-HETE / 変形性膝関節症 / 滑膜繊維芽細胞 / 人工関節置換術 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチ (RA)は、全身の関節炎をきたし、骨や軟骨が破壊され、関節機能が損なわれる炎症性疾患である。また多くの脂質メディエーターは炎症を惹起するが、近年、抗炎症作用を有する脂質メディエーターが知られている。リピドミクスを用いてRA患者とOA患者の関節滑液の脂質メディエーターを網羅的に比較解析したところ、炎症性のものに加え、抗炎症作用を有する脂質メディエーターの濃度も、RA患者で有意に高値であった。また、ROC曲線から、12-HETEは、RAとOAを区別する最も優れたバイオマーカーになる可能性が示されたが、RAにおける役割は不明である。本研究ではRAにおける12-HETEの機能を解析することを目的とした。 本年度ではまず、① RA滑膜線維芽細胞における12-HETEの受容体であるGPR31およびBLT2の発現解析を行なった。人工膝関節全置換術(TKA)の際に採取したOA、RA関節滑膜の凍結切片を作製した。OA、RA滑膜でのGPR31およびBLT2の発現を解析した。結果、GPR31、BLT2ともにRAでOAと比較し有意に高値であった。次に、② 12-HETEがRA滑膜線維芽細胞の活性化を惹起するかを検証した。RA滑膜から滑膜線維芽細胞を単離・培養した。培養した滑膜線維芽細胞に、12-HETEを0、10、30、100 nMを添加後、0、6、12、24時間刺激し、その活性化をELISAで評価した。刺激濃度、時間では、有意差は認められなかった。そこで、滑膜線維芽細胞の発現ではなく、破骨細胞を評価することにした。③採取したRA滑膜から破骨細胞を分化培養し12-HETEで刺激した。生理食塩水で刺激するものと比較し、NFATc1 mRNAの発現は時系列を追っても、48時間まで高発現であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、① RA滑膜線維芽細胞における12-HETEの受容体であるGPR31およびBLT2の発現解析を行なった。人工膝関節全置換術(TKA)の際に採取したOA、RA関節滑膜の凍結切片を作製した。OA、RA滑膜でのGPR31およびBLT2の発現を、GAPDHをコントロールとして比較解析した。結果、GPR31、BLT2ともにRAでOAと比較し有意に高値であった。その結果、12-HETEの受容体は、OAと比較し、RA滑膜で多く発現していることが確認できた。次に、② 12-HETEがRA滑膜線維芽細胞の活性化を惹起するかを検証することにした。RA滑膜より、滑膜線維芽細胞を単離、培養した。培養した滑膜線維芽細胞に100 pg/mLのTNF-α刺激下に 、12-HETEを0、10、30、100 nMを添加し、0、6、12、24時間刺激した。12-HETEの刺激濃度、刺激時間による滑膜線維芽細胞中の破骨細胞の増殖をELISAを用いて評価した。12-HETEの刺激濃度、時間の違いでは、有意差や明らか傾向は認められなかった。この理由として、滑膜線維芽細胞には、骨破壊型等4種類のものがあることが近年報告されており、そのそれぞれを区別して解析する必要性があることがわかった。そこで、滑膜線維芽細胞の発現を評価するのではなく、破骨細胞を評価することにした。③採取したRA滑膜から破骨細胞を分化培養し、12-HETEで刺激した。生理食塩水で刺激するものと比較し、NFATc1 mRNAの発現は時系列を追っても、48時間までは高発現であることがわかった。本年度では、12-HETEの受容体は、OAと比較しRAの滑膜で有意に増加していたこと。また、RA滑膜において、12-HETEの刺激で破骨細胞が増加することがわかった。本年度に予定している実験は、ほとんど完了しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った①に対し、線維芽細胞のマーカーであるpodoplaninと共染色し、実際に滑膜線維芽細胞が12-HETEの受容体であるGPR31およびBLT2の遺伝子発現をqPCRでタンパク質レベルの発現を蛍光免疫染色等で解析する。また、GPR31およびBLT2に対するSilencer select pre-designed siRNAもしくはcontrol siRNAをRA線維芽細胞に導入し、GPR31およびBLT2をknockdownしたRA線維芽細胞を作製し、同様の実験を行う。③に関して、12-HETEによる破骨細胞の増殖・活性化を検討する。まず、RAW264 cellsにおいて、12-HETEの受容体であるBLT1の発現解析を行う。破骨細胞前駆細胞の細胞株であるRAW264 cells のGPR31およびBLT2の遺伝子発現をqPCRでタンパク質レベルの発現を解析する。次に、12-HETEによる破骨細胞分化・増殖への影響を検討する。RAW264 cellsを50 ng/mLのRANKL存在下に、12-HETEを0、10、30、100 nMを添加し3日間培養する。破骨細胞の形成に関して、tartrate-resistant acid phosphatase (TRAP)染色、増殖に関してEdU assayで評価する。
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Causes of Carryover |
本研究においては、人工膝関節置換術時の滑膜を検体として使用するが、COVID-19の影響で手術件数が予定より少なくなり、必要薬剤が減少したことが挙げられる。また、COVID-19の世界的な感染拡大によって、海外含め学会参加を見合わせたため未使用額が発生した。翌年以降は、海外を含め積極的な学会参加を行い、前述の12-HETEの実験に関する試薬を購入予定である。
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