2023 Fiscal Year Research-status Report
生理的・病的荷重ストレスに応答する軟骨核酸修復・エネルギー代謝の解析と、治療応用
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22K16726
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
寺内 昂 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (70806546)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 軟骨細胞 / 細胞エネルギー代謝 / DNA修復機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢、肥満、過荷重や関節の酷使(overuse)による関節への過度の機械的ストレス (メカニカルストレス)は、軟骨細胞の活性低下、軟骨コラーゲンなど基質の変性・破壊、 軟骨下骨層の変性と関節機能障害を惹起し、変形性関節症(osteoarthritis, OA)の発症・病態に 関与すると考えられている。本研究では、メカニカルストレスに対して軟骨細胞がどのように応答するか(メカニカルストレス感受・応答機構)、防御機構はあるのか、軟骨変性機序と荷重ストレス応答との関連について分析を進め、「生理的荷重ストレス」と「病的な過剰な荷重ストレス」に対する軟骨細胞の応答能の違いを明らかにしてきた。 この荷重ストレスに対する細胞応答の違いを解明することで、OAの 病因・病態の解明と新規治療法開発の糸口を得たいと考えている。今後も、これまでの軟骨細胞のDNA修復酵素活性と細胞エネルギー代謝調節因子との関連に関する研究成果を基盤に、 メカニカルストレス応答としての「軟骨細胞DNA修復機構の変化」 と「細胞エネルギー代謝(細胞呼吸鎖)調節因子・機構」の相互作用の観点から軟骨変性の機序を詳解し、OAの病因・病態解析および予防・治療法開発研究を推進していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、生理的レベル、または過剰で病的なレベルのメカニカルストレスに応答する軟骨細胞のDNA損傷、DNA損傷修復酵素 (APEX2, Ogg1) 活性、細胞エネルギー代謝の変化、これらに影響する因子の分子機序を詳解し、次にDNA修復酵素活性とエネルギー代謝調節因子(Sirt-1, AMPK)の相互作用・関連因子を解析して、メカニカルストレス応答の防御機構としての役割を検証してきた。本研究は、軟骨変性の発生機序を、生理的・過剰な病的なメカニカルストレスに応答する 「軟骨細胞のDNA損傷修復機構」と「軟骨細胞エネルギー代謝調節因子Sirt-1-AMPK feedback loop」の相互作用の観点から詳解する計画である。これまでの成果から、生理的レベルまたは過剰で病的なレベルのメカニカルストレスに応答する軟骨細胞の「DNA修復酵素活性」と「エネルギー代謝調節機構」の相互作用(分子・調整因子)の関連についてデータが深まり、 軟骨変性の予防・抑制法開発への応用に向けて進捗があった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで計画に従って、メカニカルストレスに応答する「軟骨細胞のDNA損傷修復機構」と 「細胞エネルギー代謝 (解糖系-クエン酸回路-電子伝達系) の調節因子」の相互作用・ ネットワークを詳解し、軟骨のメカニカルストレス応答機構、防御機構ならびに軟骨変性の機序を解明して、治療法開発の基盤を確立したいと考えている。さらに、これまでに分析してきた調節機構の変化・破綻が、軟骨変性の誘因となるか否かを、実験的変形性関節症(OA)モデルで検証し、軟骨変性抑制法の開発に発展させる。本年度は、我々が開発して用いてきた3次元培養荷重負荷実験系において、検証する各因子の発現を抑制(RNA干渉法)または増強(刺激因子添加) 条件下の軟骨細胞のDNA損傷修復機序、エネルギー代謝機構を分子生物学的に解析する。
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Causes of Carryover |
本研究において、これまでに①荷重ストレスに応答し、軟骨細胞のエネルギー代謝(グルコース取り込み、ATP産 生)は一過性に亢進し、②ミトコンドリア内のクエン酸回路-電子伝達系の亢進により 過剰のフリーラジカル・活性酸素が発生して漏出すること、これが軟骨細胞のDNA酸化損傷の一因となること、さらにATP産生量を制御する細胞内エネルギーセンサーとし ての役割を担うSirt-1はAMPK活性と相互に制御し合うフィードバックネットワーク を形成することを示唆する知見を得てきたが、荷重ストレスの程度によって、どのように上記①、②が関連するかについてい、再度検証する実験を進めている。この再検証のため、新しい実験系の整備が必要であり、翌年度の計画とともに研究経費を試算し、助成金を請求することとなった。
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