2022 Fiscal Year Research-status Report
ラットの坐骨神経癒着モデルを用いた 超音波ガイド下神経剥離術の薬剤選定
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22K16745
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
宮武 和馬 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50889409)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 / 神経滑走 / 神経の癒着 / 癒着の改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイドロリリースとは末梢神経をターゲットにした神経障害性疼痛の新たな治療である。我々は既知の神経痛から原因不明の疼痛まで幅広い痛みに対して超音波ガイド下神経剥離術(以下ハイドロリリース)を行っている。今まで治らなかった痛みを劇的に改善できる。痛みが改善するメカニズムは不明な点が多いが、神経滑走の改善が関わっていると言われている。一般的には生理食塩水にわずかな局所麻酔薬を用いて行うことが多いが、もっと最適な薬剤があると考えている。我々は、①滑走性改善②生食よりも体内にとどまる③神経に害のない、という視点からヒアルロン酸に着目している。ヒアルロン酸が生理食塩水より神経滑走を改善するという仮説のもと、ラットの坐骨神経癒着モデルを用いて評価を行っている。坐骨神経を露出させ、坐骨神経の神経床の部分をバイポーラーで焼灼した。焼灼後に6-0ナイロンで神経滑走を制限し、癒着を作成した。作成した癒着に対して、生食、ヒアルロン酸を用いてハイドロリリースを行った。 (ハイドロリリースの注入時圧と広がり)超音波ガイド下に坐骨神経を確認し、癒着周辺に注射をすると、生理食塩水では抵抗がほぼなかった。生理食塩水の場合は広がりやすい部分、つまり癒着と無関係な部分に薬液が逃げてしまい、剥離の効果をあまり出していないように見えた。一方で、ヒアルロン酸の場合は注入圧が高く、注射の際に癒着部に的確に薬液を注入することができていた。 (薬液の残存具合)生理食塩水は、翌日の時点で薬液の残存は見かけ状みられなかった。一方で、ヒアルロン酸に関しては次の日でもヒアルロン酸の残存がみられ、体内に薬液が遺残しやすいことが想定された。 (ハイドロリリースの効果)6週の癒着モデルで、ハイドロリリースを行うと、神経滑走抵抗が減少することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの坐骨神経癒着モデルを作成し、超音波ガイド下神経剥離術(以下ハイドロリリース)を行なうことができている。ラットの坐骨神経癒着モデルの癒着の程度にややばらつきがあり、現在一定の癒着の程度にできないか調整を行なっている。癒着の程度は神経の引っ張り試験で確認している。癒着作成の予備実験をもう一度行うと、モデルが完成する予定であり、あとはハイドロリリースを繰り返すのみである。2023年夏までにモデルが完成し、8月に再度ハイドロリリースの実験を繰り返しで行う。評価は、引っ張り試験、神経伝導速度、免疫染色、エコーで行なっている。免疫染色以外はすでに行なっている。神経伝導速度検査で差がでるかはまだ不明であり、現在研究を重ねている。染色以外のどの評価も3回実験を行うことができており、予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
生理食塩水とヒアルロン酸で超音波ガイド下神経剥離術(以下ハイドロリリース)をさらに行なっていく。現在N=4で行なっているが、6-8まで増やす予定である。癒着による神経障害は、神経伝導速度検査で確認できる神経障害ではないと判断した場合は、伝導速度検査は中止する。引っ張り試験、エコー評価はこれまで通り行い、ここに組織の染色も実験として加えていく。ヒアルロン酸と生理食塩水の二つの比較を終えたところで、次にヒアルロン酸の分子量を変化させ、比較していく。
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Causes of Carryover |
神経引っ張り試験は現在徒手的に行なっているが、今後は自動測定が可能なものを作成予定である。この機械の作成をまだ行なっておらず、次年度使用額が生じた。
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