2022 Fiscal Year Research-status Report
酵素誘導性変形性膝関節症マウスモデルでのヒアルロン酸分解酵素HYBIDの役割解析
Project/Area Number |
22K16774
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
百枝 雅裕 順天堂大学, 医学部, 助教 (10938971)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 変形性膝関節症 / ヒアルロン酸 / HYBID / 滑膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(膝OA)の進展要因として、滑膜炎や骨棘による半月板逸脱などが注目されている。研究申請者はヒアルロン酸分解酵素であるHYBID(Hyaluronan-binding protein involved in hyaluronan depolymerization)ノックアウト(KO)マウスに内側半月板と内側側副靭帯切除による外科的膝OAモデルを作製し、関節軟骨破壊と骨棘形成が抑制されることを報告してきた。しかし、このモデルでは、滑膜炎が軽微であり半月板は切除されているため、滑膜炎や半月板逸脱によるOA進展作用を検討することは困難である。そこで、本研究では、HYBID KOマウスと野生型マウスにコラゲナーゼ関節内注射による酵素誘導性膝OAモデルを作製し、滑膜炎発症、骨棘形成、半月板逸脱、関節軟骨破壊に対するHYBIDの役割を解析することを目的とした。生理食塩水で溶解した細菌性コラゲナーゼをHYBID KOマウスと野生型マウスの左膝関節内へ2回注射し、初回注射1、2、4週後の時点で屠殺し、膝関節をマイクロCTによる画像解析と病理組織学的に検討した。その結果、2週、4週時点では関節軟骨のOA変化に加えて、大腿骨と脛骨の関節面辺縁部に著明な骨棘形成を認めた。しかし、これまでのところ、HYBID KOマウス群では野生型マウス群に比較して抑制傾向はみられるものの両群間で有意差は得られていない。その理由に関しては、実験個体数が少ないことや本実験条件での骨棘形成がきわめて高度なことが関係すると推定された。そこで、実験個体数を増やすことと関節破壊程度が少し軽度なコラゲナーゼ関節内1回注射モデルで現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ter Huurneらの方法(Arthritis Rheum 64:3604-3613, 2012)に従って、6 μl中に1 unitが含まれるように生理食塩水で溶解したコラゲナーゼ(Sigma-Aldrich, type VII collagenase from Clostridium histolyticum)をHYBID KOと野生型マウスの左膝関節内へ2回注射(初回注射2日後に2回目を注射)を行い、また、右膝関節内へ6 μl生理食塩水を2回注射して、対照とした。初回注射から1、2、4週後にマウスを屠殺して両膝関節を採取し、アルコール固定後マイクロCTで検査すると、石灰化した骨棘は良好に観察されるも、半月板は明瞭に描出できなかった。そこで、アルコール固定後膝関節をアセトンーリンタングステン酸処理してマイクロCTで検討し、半月板を観察することが可能となった。また、マイクロCT検査終了後に組織をそのままパラフィン切片にして観察すると、細胞・組織の保存がきわめて悪いことが判明した。この問題はアルコール単独固定のためと推定されたので、マイクロCT観察後に膝関節組織をホルマリンで再固定して標本作製した結果、解決することができた。現在、コラゲナーゼ関節内2回注射モデルでの実験個体数を増やすとともに1回注射によるモデルを作製し、関節軟骨OA変化、骨棘、半月板逸脱の項目におけるHYBIDの役割をマイクロCTと組織学的に解析している。以上のように、HYBIDの酵素誘導性変形性膝関節症マウスモデルでの解析手法が確立できたことから、今後のHYBIDの作用解析はスムーズに進むと考えており、本研究の全体的な進捗状況はほぼ順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コラゲナーゼ関節内2回注射モデルでの実験個体数を増やすとともにより軽度の滑膜炎モデルを作製して検討予定である。また、滑膜炎がほとんど生じない骨棘形成モデルであるTGF-β誘導性膝OAモデルを作製して、骨棘形成に対するHYBIDの役割を解析する予定である。本実験では、6 μl中に200 μgのTGF-βが含まれるように生理食塩水で溶解し、HYBID KOと野生型マウスの左膝関節内へ3回注射(初回注射以後1日おきにに注射)し、マイクロCTの画像解析とパラフィン切片で組織学的解析をORSI scoring system(Osteoarthritis Cartilage 18:S17-S23, 2010)、Lewisらの方法(Osteoarthritis Cartilage 19:864-873, 2011)、Kanekoらの方法(Matrix Biol 32:178-187, 2013)で行う予定である。さらに、これらの実験的OAモデルの関節組織について、定量PCRによりIL-1、IL-6、TNF-α、TGF-β、BMP-2、BMP-4、MMP-3、MMP-13、ADMTS5などの発現を比較・検討する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当該年度の実験で使用した実験試薬の大部分が我々の実験グループにおいてストックされていたため、試薬購入費用が大幅に節約できたことがあげられる。また、コロナ禍により多くの学会がWeb会議となり、旅費への出費が減少したことももう一つの理由である。2023年度には、実験に使用するHYBID KOマウスと野生型マウス数が増えることや、手元にない新たな試薬の購入が必要であり、学会や研究会への出張も増えることが予想され、これらの動物飼育、試薬購入、出張のための費用に充てる予定である。
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